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近年、コロナの蔓延や地震等の自然災害に代表されるように、予測することのできない状況が頻発しており、中小企業の経営にも大きな影響を与えています。そのため現在は、堅調に事業活動を行っていても、今後はこうした予期のできないリスクにより事業継続が困難になることを想定し、「事業継続力強化計画」(BCP)により対策を講じておくことが求められています。
この記事では、事業継続力強化計画の考え方や作り方、その際の注意点などについて解説いたします。
BCPとは? 事業継続ガイドラインとは?
ここではBCPの意味や、事業継続ガイドラインの概要について解説します。
BCPとは?
BCPとは、Business Continuity Planの略語で、一般的には「事業継続計画」と呼ばれています。
具体的には、自然災害や感染症のまん延、テロなどの事件の発生、大事故、サプライチェーンの途絶、サイバー攻撃などといった不測の事態が発生しても、重要な事業・業務を中断させない、または中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針、体制、手順などを示した「行動計画」のことをいいます。
認定を受けた中小企業は、防災・減災設備に対する税制優遇、低利融資、補助金の優先採択等を受けることができます。
日本は世界の中でも自然災害が多く、その中でも台風や地震による自然災害による被害は甚大なものとなりやすいといえます。
とくにコロナ感染症の拡大では、インバウンド需要の減少に続き、中国の生産活動停滞によるサプライチェーンを通じた生産の停滞に見舞われました。
野村総研によれば、過去3回行われた緊急事態宣言(まん延防止等重点措置を含む)による経済損失額は2022.04時点で計13.9兆円と試算されています。
また、台風被害も増大しており、近畿圏を中心に襲った平成30年21号台風による保険金の支払額は1兆670億円と過去最大を記録し、上位10位中7件がここ10年以内におきています。※ 日本損害保険協会調べ2022.03時点
このようにこれまでには例を見なかった災害が頻発していることから、対岸の火事ではなく、いつこれらの災害が自社に行ってもおかしくない状況となっています。
事業継続ガイドラインについて
内閣府は令和3年4月に改訂版「事業継続ガイドライン」を発表しました。政府はこれまでにもたびたび「事業継続ガイドライン」を改定しており、今回の改定は平成 17 年の策定以来、3 度目の改定となります。
事業継続ガイドラインの目的は、「事業継続の取組み(事業継続計画を含めた事業継続マネジメントの概要、必要性、有効性、実施方法、策定方法、留意事項等)を示すことで、我が国の企業・組織の自主的な事業継続の取組みを促し、我が国全体の事業継続能力の向上を実現すること」とされます。
事業継続ガイドラインは、ガイドラインの概要、方針の策定、分析・検討、事業承継戦略、計画の策定、事前対策及び教育・訓練の実施、見直し・改善、経営者及び経済社会への提言の各章から構成されています。
また、実際の申請書の書き方については、とくに「事業継続力強化支援計画の申請ガイドライン(案)」が参考になります。
参考:事業継続力強化支援計画の申請ガイドライン(案)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei//shokibo/keizokuryoku_download/keizoku_guideline.pdf
BCPを作成するメリットと効果について
BCPを作成するメリットについて
BCPの策定は法律で義務づけられたものではありませんが、その作成には以下のようなメリットがあります。
〇 被害の最小化、重要事業の早期復旧
BCPを策定することで、自社の重要業務や想定されうるリスクなどが明らかとなり、これらに対してあらかじめ行動計画を講じることで、万が一の場合の事業へのダメージを最小限に抑えることができます。
〇 日常的なトラブルへの対策にも適用できる
事業の継続中には、事業停止となるような大きな災害だけでなく、一時的、局所的な災害やトラブルが生じる可能性も十分にあります。しかし、このような日常的なトラブルが生じた場合でも、BCPを策定しておけば迅速・適切に対応することが可能となります。
〇 利害関係人等からの信頼が高まる
最近ではBCPへの取り組みが社会的に重視されていることから、これを策定することで金融機関や取引先などの利害関係人へ安全性をアピールすることができるとともに、それらからの信頼を高める役に立ちます。とくに、金融機関では事業の継続に強い関心を持つことが多いため、BCPを策定していることは銀行等からの企業評価を高めることにつながります。
なお、介護業においては2021年4月から施行された「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」内で2024年からBCPの策定が義務づけられました。
〇 各種の支援策が利用できる
事業継続力強化計画の認定を受けると、各種の支援策が利用できるようになります。
支援策には、以下のようなものがあります。
- 低利融資や信用保証枠の拡大など金融支援
- 防災・減災設備に対する税制支援(20%の特別償却)
- 補助金(ものづくり補助金等)の加点
- 認定事業者を要件とした県・市町など地方自治体等からの補助金等支援
- 認定ロゴマークの利用 など
事業継続ガイドラインBCPの効果についてンについて
BCPを策定している企業にその効果を調査した結果は、以下の通りとなっています。
この調査結果によれば、「従業員のリスクに対する意識が向上した」や、「事業の優先順位が明確になった」、「業務の改善・効率化につながった」と感じている企業が多いことがわかります。また、こうした内部的な効果に限らず「取引先からの信頼が高まった」という対外的な効果を感じている企業も23%と少なくないことが注目されます。
従業員のリスクに対する意識が向上した | 56.7% |
事業の優先順位が明確になった | 39.2% |
業務の定型化・マニュアル化が進んだ | 32.9% |
業務の改善・効率化につながった | 28.3% |
取引先からの信頼が高まった | 23.8% |
実際の事業トラブルに遭遇し適切に対応できた | 11.3% |
調達先・仕入先が拡大した | 8.2% |
その他 | 6.0% |
このようにBCPの策定には、将来的なリスクへの予防や、BCP策定のプロセスを通じて自社の事業を見直すきっかけとなるだけでなく、これを通じて取引先との信頼関係をさらに強化する役割も期待できるといえます。
BCPと事業継続マネジメント、防災計画とBCPの違い
事業継続マネジメントとは、BCPの策定や維持・更新、実施ための予算・資源の確保、事前対策の実施などを行う平常時からのマネジメント活動のことであり、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものです。
そのため事業継続マネジメントとは、BCPを行うための一部として位置づけられます。
これに対して、防災計画は局所的・限定的な身体・生命の安全確保や物的被害の軽減を主な目的としており、この点で、全社的な重要業務の継続や早期復旧を目的とするBCPとは異なります。
防災計画とBCPでは、次のような違いがあります。
防災計画 | BCP | |
主な目的 | 身体・生命の安全確保や物的被害の軽減 | 事業または重要業務の継続・早期復旧 |
活動の対象 | 各拠点 | 全社 |
対象となる事象 | 限定、局所的な災害 | 事業中断の原因となり得るあらゆる事象 |
重要事項 | 死傷者数や損害額の最小限化、被災者の救助、拠点の復旧 | 左記に加えて、重要業務の復旧、利害関係人への影響の抑制等 |
このように両者では目的・対象とする範囲等に大きな違いがあり、防災計画をもってBCPに変えることはできないため、防災活動の単なる延長として BCM を捉えると、その効果を十分に発揮できないおそれがあります。
したがって、「ウチは、しっかりした防災計画を作っているからBCPは不要」などと考えるのではなく、防災計画とともに、もしくは防災計画を取り込んだBCPを作成する必要があります。
自然災害への企業の対応状況
自然災害への企業の対応状況については、大企業の約5割が「十分に対応を進めている」、「ある程度対応を進めている」と回答しているのに対し、中小企業では約3割にとどまっています。
しかし、大企業の中でも、「十分に対応を進めている」と回答したのは3.3%に過ぎず、大企業でも十分に取り組みができているところが少ないということや、中小企業ではさらに自然災害へのリスク対応が進んでいないことが伺えます。
十分対応している | ある程度対応している | あまり対応できていない | ほとんどできていない | わからない | |
大企業 | 3.3% | 51.6% | 33.2% | 7.7% | 4.2% |
中小企業 | 1.5% | 31.5% | 43.5% | 19.5% | 4.0% |
また、具体的な企業の防災への取組み内容を見た場合、「社内連絡網の整備」、「非常時向けの備品の購入」、「飲料水、非常食などの備蓄」といった自然災害発生後、即時に必要となる項目への取組割合は高くなっています。
しかし一方で、「非常時の社内対応体制の整備・ルール化」、「事業継続資金の確保」などの割合は高くなく、被災後に事業を継続するための備えは十分でないことが読み取れます。
社内連絡網の整備 | 58.3% |
非常時向けの備品の購入(ヘルメット、ラジオ、救急用具など) | 42.1% |
飲料水、非常食などの備蓄(備蓄品に関する教育訓練の実施を含む) | 38.7% |
ハザードマップの入手 | 30.0% |
非常時の社内対応体制の整備・ルール化 | 28.7% |
防災・避難訓練の実施(避難時の指針確認など) | 25.6% |
事業継続資金の確保(現預金・キャッシュフローなど) | 16.0% |
事業継続計画(BCP)の策定 | 15.9% |
災害時行動マニュアルの整備 | 15.5% |
BCPの取組みが進まない理由
BCPを「策定していない」と回答した企業が挙げた理由は以下の通りとなっており、「BCP策定に関する人材やスキル・ノウハウがない」、「計画の策定に必要な人材がいない」、「計画を実践するのが難しいと考えている」など、主にマンパワーに関連する不足が要因となっていることがわかります。
策定に必要なスキル・ノウハウがない | 41.7% |
策定する人材を確保できない | 28.3% |
実践的に使える計画にすることが難しい | 28.0% |
自社のみ策定しても効果が期待できない | 23.9% |
策定する時間を確保できない | 22.4% |
必要性を感じない | 20.7% |
リスクの具体的な想定が難しい | 20.6% |
策定する費用を確保できない | 12.4% |
また、企業がどのようなリスクを事業の継続が困難になるものと考えているかについては、感染症流行(69.4%)、自然災害(68.7%)、取引先の倒産(41.3%)、取引先の被災(32.7%)が上位を占めており、コロナの蔓延後においては感染症の流行や自然災害が大きな割合を占める結果となっています。
BCP作成の手順
BCPは、以下の手順で作成するとムダや漏れがなく、効率的に策定することができます。
目的の確認と基本方針の立案
BCPの策定は、「何のために策定するのか?」、「どのような方向性で決めるのか?」といった、目的の確認や基本的な方針を決めることから始めます。
なぜなら、緊急時には、社員や取引先が一致団結して行動することが不可欠だからです。
なお、BCPの基本方針を考えるときには、「従業員の雇用」、「顧客への責任」、「地域経済への貢献」の3つの観点を軸として、どのような行動をすべきかを考えると決定しやすくなります。
重要商品の検討
会社の人員や資材その他財産の中で、災害時に優先的に守るべき商品やサービス、その順位を決めておきます。
例えば、収益や売上げが大きな商品や顧客データ、設備類など、それらがなければ会社の存続ができないものなどがこれに該当します。
災害等のリスクの確認・認識
国土交通省ハザードマップポータルサイトなどを参考に、大きな地震や洪水などが発生した場合に、インフラや会社にどのような影響が生じるのかを想定します。
そのうえで、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」のそれぞれについて、どのような被害が考えられるかを想定します。
参考:国土交通省ハザードマップポータルサイト https://disaportal.gsi.go.jp/
事前対策の実施
被害が生じた場合における、会社がとるべき対策や行動を決めておきます。
例えば、集合してもらうためのルールや従業員の避難方法、安否確認の方法など人命に関わる部分を優先し、そのうえで非常時の緊急時体制の構築、被害状況の把握・被害情報の共有などの具体的な対応を決めていきます。
ヒト、モノ、カネ、情報への対応
上記で検討したヒト、モノ、カネ、情報への影響を踏まえ、どのような対策を実行するかを検討します。例えば、以下の取組みなどが考えられます。
① 社員の多能工化を進める
② 設備の耐震化
③ 保険の加入
④ バックアップデータの取得や持ち出し方法
平時の体制の整備と見直し
災害の発生時に会社が事業継続のための適切な行動をとるには、平時から体制を整備しておくことが重要となります。そのためには、最低限、訓練・教育の実施や指揮命令を行う責任者の決定、権限の確認などをしておく必要があります。
また、それとともに、常にBCPの内容を会社の現状にあったものとするため、必要に応じて定期的にBCPの見直しをすることも重要となります。
BCPの押さえておくべき5つのポイント
BCPを策定する際には、以下の5つのポイントを抑えておくことをおすすめします。
1.重要商品や事業の特定
緊急時において優先して継続・復旧すべき商品や事業を特定します。なお、緊急時には、利用できる人材や設備、資金が制約され、あまり多くのことができないため、本当に必要なものに絞り込むことが重要となります。
2.復旧までの目標時間を設定する
緊急時において主要な事業を復旧する目標時間を考えておきます。目標がないと適切、効率的な行動を起こすことが難しくなります。また、実際に災害が発生した際には、被害状況を判断しながら復旧までの時間を見直すことも必要となります。
3.取引先や金融機関とあらかじめ協議しておく
主要な事業やその復旧時間について顧客や取引先、金融機関などとあらかじめ協議しておきます。とくに金融機関向けには、事業計画書や経営改善計画とあわせてBCP計画書を提出しておくと信用力のアップにつながります。
4.代替策を用意・検討
事業拠点や生産設備、仕入れなどの代替策を用意または検討するとともに、緊急時にこれらが使用不能・機能不能となった場合を想定して、可能な範囲で準備します。データなどはハードディスクとクラウドによる保存の両方でのバックアップをしておくことをおすすめします。
5.従業員とBCPの方針や内容について共通認識を形成
従業員に対してもあらかじめBCPの内容を開示し、会社の考え方や緊急時にどのように行動すべきかについての共通認識を形成しておきます。
なお、計画の説明の際にはBCP計画の概要を説明するだけでなく、「なぜ、BCPが必要なのか?」という目的から理解してもらうことが重要となります。
「事業継続力強化計画」認定制度について
「事業継続力強化計画」認定制度とは、自然災害等にかかる防災・減災対策に取り組む中小企業が、その取組みを「事業継続力強化計画」として取りまとめ、経済産業大臣が認定する制度です。
この制度による認定を受けた中小企業は、税制措置や金融支援等さまざまな支援策を受けることができる他、認定を受けた企業は公式のロゴマークを会社案内や名刺に使用することができるようになります。
BCPに取り入れたい対策やポイント
BCPを策定する際には、以下の対策やポイントを取り入れると、さらに充実した内容とすることができます。
ハザードマップの活用
いざというときのリスクを具体的に知ってもらうためにはハザードマップが有効です。
これにより現在の場所で水害が発生する危険性があるかどうかや、災害時にどの程度の被害となるのかを予測することができます。
過去の情報を参考にする
現在の場所で過去にどのような災害があったかや、災害に弱い部分がないかを参考にすることで、今後の危機管理対策に生かすことができます。
とくに、近くに大きな断層や川がないか、土砂崩れしそうな箇所はないか、火災時における密集地帯ではないかなどの視点から計画を見直すことが大切となります。
定期的な訓練の実施
BCPは、それを策定しただけで災害から会社を守れるわけではありません。災害時に会社を守るには、いざというときにすぐに動けるよう、常日頃からの訓練が重要となります。
また、実際の訓練を通して問題点を発見し、これを改善していくことが必要となります。
一定の備蓄の確保
常に会社に一定の備蓄をしておくことも不可欠な対策の一つとなります。
災害時には会社に数日間とどまらざるを得なくなることもあるため、そのようなケースに備えて生活ができるだけの最低の食料や生活用品を、人数や規模にあわせて確保しておく必要があります。とくに停電時に備えた、代替電力の確保などは重要といえます。
資金
会社が災害に見舞われた時には数日、もしくはそれ以上売上げが見込めなくなる可能性があることから、この間の資金についても確保の目途をつけておく必要があります。
例えば、小規模企業共済では、災害救助法の適用された災害等または一般災害(火災、落雷、台風、暴風雨等)により被害を受けた際に、経営の安定を図るための事業資金を低金利で借入れできます。
またその他にも、各種の災害保険に加入しておくと、いざというときの資金が補填されるため安心です。
まとめ
コロナ感染症の影響により、企業を取り巻く環境は大きく変化し、経営にも甚大な影響を与える中、今後、これらの不測の事態が生じた際の企業の生き残り策の一環として「事業継続力強化計画」(BCP)の策定が重要視されています。
BCPにはこれを作ることで、万が一の事態への備えができるだけでなく、リスク意識への改善や取引先との信頼関係の構築など経営面における効果もあります。
しかし、計画を作って終わりとなってしまう企業も多いため、既存の考えにとらわれずに、自社にとって何が重要なのかという優先順位をよく考えて作成するようにしましょう。
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