
2025年12月、日本銀行は政策金利の引き上げを決定しました。これにより、長らく続いた低金利の時代から、金利のある経済環境へと新たな段階に入りました。
こうした変化に加え、原材料価格の高騰や慢性的な人手不足といった課題も続いており、中小企業の経営においては、これまで以上に「コストを吸収できる収益力」や「金利負担に耐えうる財務体質」が求められています。
このような状況下で、金融機関等の支援(伴走支援)を得ながら有利な融資や保証を活用するためには、金融機関が納得する「実効性の高い事業計画」を作成できるかが重要なカギとなります。
この記事では、2025年の最新の融資環境を踏まえ、金融機関の協力を得るためのポイントや、具体的な計画の立て方について解説いたします。
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2つの事業計画の違いと計画作成のメリット
事業計画には、大きく分けて創業時に作成する「創業計画」と、事業の開始後に作成する「事業計画」の2つがあり、それぞれで重視されるポイントが異なります。
創業計画の特徴
創業計画書は、これから始める事業の方向性や、売上・収支の見込みを明らかにするために作成されるものです。
創業計画には次のような特徴があります。
- 実績がないため、経営者個人の過去の経験(斯業経験)や、同業他社のデータ、商圏調査などが審査の根拠となります。
- 多くのケースで一定の自己資金が必要です。自己資金は「計画性」や「金利上昇時の安全性」を示す指標として重視されます。
- 日本政策金融公庫などでは、定められたフォーマットに基づいて記載する必要があります。
- 実績がない分、「なぜこの事業がうまくいくのか」というロジックがしっかりしていれば、比較的融資を受けやすい制度が整っています。
- 原則として、無担保・無保証人の枠組みでは融資限度額に一定の制限(例:3,000万円程度など制度による)があります。
- 金利上昇局面では、返済計画における利息負担を甘く見積もらないことが重要です。
通常の事業計画の特徴
通常の事業計画は、すでに行っている事業の実績や財務内容をベースとし、今後の改善や成長(設備投資や賃上げ等)の見込みを立てるものです。
事業計画書には、次のような特徴があります。
- 過去の決算書や試算表の実績がベースとなるため、創業計画よりも高い精度と具体性が求められます。
- 自己資金の額そのものより、「キャッシュフローが回るか」「営業利益で利息を払えるか」といった財務の健全性が重視されます。
- 決まったフォーマットはありませんが、金融機関が理解しやすい構成(現状分析→課題→解決策→数値計画)である必要があります。
- 過去の実績に問題がある場合でも、抜本的な改善策(不採算事業の見直しや高付加価値化など)を具体的に示せれば、支援を受けられる可能性があります。
- 財務内容や将来性が評価されれば、数千万円~数億円といった大型の資金調達が可能となります。
- 複数の金融機関から協調融資を受ける際の共通言語となります。
計画を作成することによるメリット
事業計画を作ることにより、次のようなメリットが得られます。
①頭の中が整理され、やるべきことが明確になる
漠然としたアイデアや不安を可視化することで、「コスト高にどう対応するか」「どこに投資すれば利益が出るか」といった具体的なアクションが整理されます。
②経営リスクの早期発見(感応度分析)
「もし金利がさらに上がったら」「原材料費が高騰したら」というシミュレーションを行うことで、リスクへの備えを事前に検討できます。
③自社の強み・弱みを客観視できる
同業他社との比較や市場ニーズの検討を通じて、自社の本当の強みや、解決すべき弱み(課題)を客観的に把握でき、より正確な戦略が立てられます。
④対外的な信用力の向上
金融機関や株主などの利害関係者に対し、根拠のある計画を示すことは「自社の状況をしっかり把握している経営者だ」という安心感につながり、協力を得やすくなります。
今後の支援の新しいあり方。「伴走支援」について
金融機関の役割は、従来の「担保や保証に依存した融資」から、企業の価値向上を支える「事業性評価」や「伴走支援」へとシフトしています。
「伴走支援」とは?
これまでの支援は、企業の要望(資金不足など)に対症療法的に対応する「解決型」が中心でした。
しかし、環境変化が激しい現在では、経営者自身も気づいていない本質的な課題を見つける必要があります。
そのため政府や金融機関は、「対話と傾聴」を通じて経営者の悩みや課題を深く理解し、共に解決策を考え、実行をサポートする「伴走支援」を推進しています。
企業側も、金融機関をパートナーとして捉え、積極的に情報を開示し対話する姿勢が求められます。
目指すのは「自走化」
伴走支援の最終的なゴールは、企業が自ら課題を設定し、解決できる状態、すなわち「自走化」することです。
<自走化に必要な3つの力>
① 課題設定力
財務データや市場環境を正しく評価し、必要な改善点(例:安売りからの脱却、生産性向上など)を認識できること。
② 課題達成力
課題解決のための方策・実行体制・管理手法が作られており、意思決定ができること。
③ 自主発動力
変化の必要性が組織内で共有され、社員が主体的に取り組みを始められる素地があること。

伴走支援を活用した信用保証制度(経営改善サポート保証など)
事業環境の変化に対応し、経営改善に取り組む中小企業者を支援するため、「経営改善サポート保証」などの制度が整備されています。
これらは金融機関による継続的な伴走支援を受けることを条件に、保証料の減免や返済期間の延長などのメリットが受けられる場合があります。
| 制度の概要例 | 経営改善サポート保証(感染症対応型等の借換含む)など |
|---|---|
| 保証限度額 | 最大2億8,000万円(一般の無担保保証とは別枠) |
| 保証期間 | 最長15年以内(据置期間 最大5年以内) |
| 保証料率 | 0.2% など(国による補助がある場合) |
| 要件 | ・「経営改善計画書」等の作成 ・金融機関による継続的な伴走支援(モニタリング) |
※制度の内容は変更される場合があるため、最新情報は信用保証協会のWebサイト等をご確認ください。
伴走支援や融資申請における「経営行動計画書」の作成ポイント
伴走支援型の融資や保証制度を利用する際には、「経営行動計画書」やそれに準ずる計画書の提出が求められます。ここでは、実務的な記載のポイントをご説明します。
経営行動計画書の主な構成
計画書は主に以下の4つの要素で構成されます。金融機関はこの内容に基づき、「支援(保証)をするか」「将来の返済能力があるか」を判断します。
- 基本情報(事業者名など)
- 現状認識(事業概要、SWOT分析、財務状況)
- 財務分析(6つの指標)
- 具体的なアクションプラン(数値計画含む)
1. 現状認識
「事業概要」「外部環境、事業の強みと弱み(課題)」「経営状況、財務状況」について整理します。
「外部環境、事業の強みと弱み(課題)」の例
- 外部環境:金利上昇により資金調達コストが増加傾向。原材料費の高止まりと人手不足による採用難が続いている。
- 強み:他社にはない加工技術があり、高単価でも受注が可能。長年の顧客基盤がある。
- 弱み(課題):価格転嫁が遅れており利益率が低下。若手への技能承継が進んでいない。
「経営状況、財務状況」の例
- 経営状況:売上は回復傾向にあるが、コスト増により営業利益が圧迫されている。
- 財務状況:借入依存度が高く、金利上昇の影響を受けやすい体質である。自己資本比率の改善が必要。
2. 財務分析(重要な6つの指標)
以下の算定式を用いて、自社の数値を計算し、客観的な状態を把握します。
① 売上増加率 【計算式】=(当期売上高 / 前期売上高) - 1
② 営業利益率 【計算式】=営業利益 / 売上高
③ 労働生産性 【計算式】=営業利益 / 従業員数
④ EBITDA 有利子負債倍率 【計算式】=(借入金 - 現預金) / (営業利益 + 減価償却費)
⑤ 営業運転資本回転期間 【計算式】=(売上債権 + 棚卸資産 - 買入債務) / 月商
⑥ 自己資本比率 【計算式】=純資産 / 総資産
※これらは企業の「稼ぐ力」や「返済能力」を見るための代表的な指標です。
3. 具体的なアクションプラン
現状認識で挙げた「課題」を解決するための、今後5年間の取り組みと目標数値を記載します。
(アクションプランの例:利益率の改善)
- 課題:コスト増に対応できておらず、利益率が低い。
- 取組計画:製品ごとの原価を精査し、不採算品の値上げ交渉を行う。同時に、内製化比率を高めて外注費を抑制する。
- 改善目標指標:営業利益率の向上。
- 目標値の推移イメージ:
1年目:1.0%(現状維持・改善着手)
2年目:2.5%(価格改定の効果発現)
3年目:4.0%(内製化によるコスト減)
4年目:5.5%
5年目:7.0%(高収益体質へ転換)
【ポイント】
目標数値は「絵に描いた餅」ではなく、根拠のある数字にしましょう。「なぜ5年後に7%になるのか」を、取り組み内容と紐づけて説明できるようにしておくことが重要です。また、初年度から急激に良くするのではなく、段階的に改善していく計画の方が現実的で信用されやすくなります。
まとめ
2025年、金利のある世界へと移行し、経営環境は大きく変化しています。これからの時代は、「待っていれば支援が受けられる」のではなく、企業が自ら現状を分析し、将来の計画を立て、それを金融機関に説明して協力を引き出す姿勢が求められます。
一見難しく感じるかもしれませんが、事業計画を作成することは、融資のためだけでなく、自社の進むべき道を明らかにし、筋肉質な会社を作るための最良の手段です。
まずは現状の課題を整理し、解決に向けた第一歩となる計画づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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