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中小企業の中には、コロナの蔓延や近時の円高などにより資金繰りが厳しく、「融資の返済ができない」「事業の整理を考えている」というところも多くなってきています。
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、このような事態を想定し、政府が作成した金融機関や中小企業が取るべき対応をまとめた指針となります。このガイドラインの指針を活用することで、返済ができなくなった場合でも金融機関と円滑な協議を通して、体力に合わせた返済や自宅の確保などができるようになりました。
この記事では、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の概要と中小企業がこれを利用する場合のポイントの他、あわせて実施された「中小企業活性化パッケージ」について解説いたします。
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の概要について
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」とは?
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」とは、令和4年3月4日に中小企業の事業再生等に関する研究会が策定・公表した、中小企業版の私的整理手続に関する指針です。
本ガイドラインでは、中小企業者の「平時」や「有事」の各段階において、中小企業者と金融機関のそれぞれが果たすべき役割を明確化し、事業再生等に関する基本的な考え方を示すとともに、より迅速に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう新たな準則型私的整理手続である「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めています。
なお私的整理手続とは、民事再生や会社更生、破産手続きなどの法的整理手続きとは異なり裁判所を関与させずに当事者間の話し合いで債務整理を行うものをいい、これまでにも2001年に「私的整理に関するガイドライン」が策定されています。
今回のガイドラインはその内容を改正しつつ、さらに具体的な手続きについて定めたものとなります。
また、本ガイドラインとともに、経済産業省ではコロナ資金繰り支援の継続や増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策を展開するために金融庁・財務省とも連携の上で「中小企業活性化パッケージ」を策定しました。
そのため、コロナの蔓延に起因して資金繰りが厳しくなった企業においては、これら両方の支援策を利用することが可能となります。
その他にも、中小企業庁ではこの他に以下のようなガイドラインを策定しています。
円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため、事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめたものとなっています。
M&A に関する意識、知識、経験がない後継者不在の中小企業の経営者の背中を押し、M&A を適切な形で進めるための手引きを示すとともに、これを支援する関係者が、それぞれの特色・能力に応じて中小企業の M&A を適切にサポートするための基本的な事項を併せて示したものとなっています。
事業再生ガイドライン作成の経緯
以前より、中小企業における過大な借入れは社会問題となっていましたが、コロナ禍を契機としてさらにその過剰感は加速し、借入れ後の返済ができないという企業の存在が表面化してきました。
これに対して政府は、このような状況に陥った債務者に対し柔軟な支援をすることを金融機関に要請してきましたが、その方針をまとめるとともに自力再生が難しくなりつつある企業の支援をするためのスキームとして作られたのが、今回の「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」となります。
法的整理よりも、事業再生ガイドラインによる私的整理が推奨される理由
企業が経営破綻に至った場合には、「法的整理手続き」と「私的整理手続き」の2つの処理方法があります。
破産や民事再生などに代表される「法的整理手続き」では、裁判所が手続きに介入して指揮等を行うため、手続きの透明性と公平性が保証され、法律に則った平等な手続きが行われます。
しかし、法的整理がされた場合には、その事実が取引先や利害関係人に知られてしまうことから、風評被害や信用低下を招くこととなり結果として企業価値を大きく毀損させてしまいます。そのため、実際に配当される額は0か微々たるものとなるのが普通です。
これに対して私的整理では、裁判所が関与せず、関係者による話し合いにより手続きが行われます。そのため、ネガティブな情報が外部に漏れにくく企業価値を維持しやすいという特徴があります。また、再生時にスポンサー企業の支援を受けやすく、その分事業を存続できる可能性が高まります。
このように私的整理には、企業価値を維持しやすいことや関係者間で柔軟な処理が可能というメリットがありますが、一方で、手続きを監督する者がいないため、公平な処理や分配の実現に問題が残りそれが原因でこれまで十分に活用されてきたとはいい難い面がありました。
今回、策定されたガイドラインでは、これまでの私的整理手続きの不備や問題点が大きく改善され、手続きの信頼性・透明性が増すとともに実務的もさらに使いやすくなったため、今後においてはこれを活用した適切な事業再生処理が行われることが期待されています。
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の目的と構成について
ガイドラインの目的
事業再生ガイドラインは、全部で3部構成となっており、その概要は以下の通りとなっています。
第一部 本ガイドラインの目的等
第二部 中小企業の事業再生等に関する基本的な考え方
第三部 中小企業の事業再生等のための私的整理手続
本ガイドラインは、以下の2つを主な目的として作成されています。
① 中小企業者の「平時」「有事」「事業再生計画成立後のフォローアップ」等の各々の段階において、中小企業者、金融機関それぞれが果たすべき役割を明確化し、中小企業者の事業再生等に関する基本的な考え方を示すこと。
本マニュアルの第二部では、「平時」と「有事」とに分け、それぞれにおいて中小企業や金融機関が果たすべき対応を明確にし、その後に行うべき「事業再生計画成立後のフォローアップ」について定めています。
② 新型コロナウイルス感染症による影響からの脱却も念頭に置きつつ、より迅速かつ柔軟に中小企業者が事業再生等に取り組めるよう、新たな準則型私的整理手続を定めること。
本マニュアルの第三部では、中小企業者等が私的整理を公正かつ迅速に行うための「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」を定めています。
この手続きは、法的整理手続によらずに、債務者である中小企業者と債権者である金融機関等との合意にもとづき、中小企業者の円滑な事業再生や廃業を行うことを目的としたものとなっています。
以上のように本マニュアルは、
- 平時や有事において中小企業や金融機関がとるべき対応
- 企業の経営が破綻した場合の再生手続き
について定めたものとなっています。
平時における中小企業者と金融機関の対応
本ガイドラインの第二部では、平時(通常の経営時)と有事(経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合)のそれぞれにおいて中小企業と金融機関がとるべき対応について定めています。
平時において中小企業がとるべき対応について
平時においては、中小企業者と金融機関が適時適切な対応を取り、信頼関係を構築しておくことが重要との観点から両者においては以下の対応をとるべきものとされます。
<債務者である中小企業側に求められる対応>
① 収益力の向上と財務基盤の強化
「中小企業者は、事業計画を策定し、当該計画の実行・評価・改善を行うこと等で、収益力の向上を目指し、財務基盤及び信用力を強化すること」
中小企業者が平時において、事業の維持・発展等に必要な資金を円滑に調達するためには、事業計画書を作成し、その内容にしたがった経営をすることで収益力の強化を図ることが求められています。
② 情報開示等による経営の透明性確保
「中小企業者は、経営や損益の状況、資産・負債の状況(保証人等のものを含む)、事業計画や業績の見通しについて、正確かつ信頼性の高い情報を開示・説明することにより、経営の透明性を確保するように努めること。
また、開示後に情報に重大な変動が生じた場合には、自発的に報告するなどに努めること。」
通常、中小企業では、経営や損益、資産・負債の状況などについて、金融機関に対して正確かつ信頼性の高い情報の開示が行われていることが少なく、それが金融機関との関係を阻害する一因となっています。そのため、債務者である中小企業には、平時から正確な情報を積極的に金融機関へ開示・報告等することが求められます。
なお、情報の信頼性を高めるうえで、法令に即した計算書類等を作成する他、「中小企業の会計に関する基本要領」や「中小企業の会計に関する指針」を積極的に活用し、公認会計士や税理士等による検証を受けることが望ましいとされています。
③ 法人と経営者の資産等の分別管理
「中小企業者は、法人の業務、経理、資産等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離し、法人と経営者の間の資金のやりとりを、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備して、法人と経営者の資産等を適切に分別管理するように努めること。」
中小企業者は、法人の業務、経理、資産等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離することが重要とされます。この両者の取引には、役員報酬・賞与、配当、経営者への貸付等を含みます。
なお、ここでいう「社会通念上適切な範囲を超えない」とは、例えば、利益額に比して著しく高額な役員報酬・賞与を支給しない、法人の資金をもって私的目的のために経営者に多額の貸付を行わないなどの行為が該当します。
④ 予防的対応
「中小企業者は、平時から有事へ移行しないように事業環境や社会環境の変化に的確に対応するように努めるとともに、有事へ移行する兆候を自覚した場合には、上記の対応を取るのみならず、速やかに金融機関に報告し、金融機関や社外の実務専門家、公的機関等の助言を得るように努めること。」
中小企業者は、常に自社の経営状況を把握し、支払困難となるような事態に陥らないようにし、もし、そのような兆候が生じた場合には、速やかに金融機関へ報告し、専門家の意見を得るようにすべきものとされます。
なお、この場合の「社外の実務専門家」は、「顧問税理士」等の顧問契約を結んでいる専門家も対象となります。
<債権者である金融機関側に求められる対応>
本マニュアルでは、債権者である金融機関に対しても、平時においては以下の対応をとるべきことが求められています。
① 経営課題の把握・分析等
金融機関は、開示・説明を受けた経営情報等にもとづき中小企業者の経営の目標や課題を把握・分析し、事業の維持・発展の可能性の程度等を適切に見極めるものとされます。また、あわせて中小企業者が自らの経営の目標や課題を正確かつ十分に認識できるよう適切に助言するものとされています。
② 最適なソリューションの提案
金融機関は、中小企業者の経営の目標の実現や課題の解決に向けて、中小企業者の立場に立って、適時、能動的に最適なソリューションを提案するものとし、その際には他の金融機関、実務専門家等と連携するものとされます。
③ 中小企業者に対する誠実な対応
中小企業から開示・説明を受けた金融機関は、その事実や内容だけをもって中小企業者に不利な対応がなされることのないよう、情報開示に至った経緯やその内容等を踏まえ、誠実な対応に努めるものとされます。
④ 予兆の管理
金融機関は、有事への段階的移行の兆候を把握することに努めるとともに、必要に応じて、中小企業者へ有事へ移行しつつあることを認識するよう働きかけ、事業改善計画の策定やその実行に関する主体的な取組みを促すものとされます。
以上のように、平時においては、中小企業に対しては、
- 収益力の向上と財務基盤の強化
- 適切な情報開示
- 法人と経営者の資産等の分別管理
金融機関には、
- 中小企業の経営課題の把握・分析および助言
- 能動的な提案と専門家等との連携
- 中小企業の経営のモニタリングを通じて、経営課題等に関する最適な提案の実施
- 有事への移行時には兆候の把握と事業計画書の作成・実行への働きかけ
が求められています。
有時における中小企業者と金融機関の対応
中小企業者は、次の状況が生じた場合(以下、「有事」という)には、以下の対応をとるべきものとされます。
- 収益力の低下
- 過剰債務等による財務内容の悪化
- 資金繰りの悪化等が生じたため、経営に支障が生じ、又は生じるおそれがある場合
<債務者である中小企業側に求められる対応>
① 経営状況と財務状況の適時・適切な開示等
「中小企業者が事業再生等を図るためには、金融機関に対して、正確かつ丁寧に信頼性の高い経営情報等を開示・説明することが求められる。
また、開示する経営情報等の信頼性の向上の観点から、公認会計士、税理士等による検証を経て、その検証結果と合わせた開示を行うことが望ましい」
中小企業者が事業再生等を図るためには、金融機関に対して、正確かつ丁寧で信頼性の高い経営情報等を開示・説明することが求められます。これには、毎期の決算書の提出の他、資金繰り表や試算表の提出、事業計画の途中経過の報告、役員や取引先の変更などが考えられます。また、その際には開示する経営情報等について公認会計士や税理士等による検証を受けることが望ましいとされます。
② 本源的な収益力の回復に向けた取組み
「事業再生を進めるにあたっては、中小企業者が自律的・持続的な成長に向け、本源的な収益力の回復に取り組むことが必要」
中小企業が事業再生を進める際には、自律的・持続的な努力により、収益力の回復に取り組むことが必要とされます。なお、ここでいう収益については、「平時」においては収益力の「向上」が、「平時」から「有事」への移行期においては収益力の「改善」が、「有事」においては収益力の「回復」が重要とされています。
③ 事業再生計画の策定
「中小企業者は、必要に応じて、実務専門家等に相談し、その支援・助言を得つつ、自力で事業再生計画を 策定することが望ましい」
有事における中小企業では、事業再生に向けて自発的に事業計画書を作成するとともに、その際には必要に応じて、専門家の支援や助言を得ながら行うことが望ましいとされています。なお、金融機関に債務の減免等を求める場合の事業再生計画の内容は、以下の要件を満たしたものであることが必要となります。
- 実行可能性のある内容であること
- 金融支援を求める必要性・合理性があること
- 金融債権者間の衡平や金融機関にとっての経済合理性が確保されていること
- 経営責任や株主責任が明確化されていること
有事における対応の方法やタイミング
有事における対応は、中小企業者を取り巻く事業環境や、事業再生計画、金融支援の有無等によってさまざまですが、以下の進め方や対応を参考にすべきものとされます。
返済猶予等の条件緩和の申し出のタイミング
中小企業者は、
- 収益力の回復に向けた自助努力
- 非事業用資産の換価・処分等
などを行ってもなお、債務の元本の返済が困難な場合には、金融機関に対して、元本返済猶予(リスケジュール)や、その他の返済条件の緩和等の要請を検討するものとされます。
さらに、このような状況において、急激な資金の流出を抑制する必要があるときは、元本返済の一時停止・一時猶予の要請を検討するものとされています。
なお、ここでいう「条件緩和」とは、資金繰り等の悪化を改善するために行う、元本返済期日の延長や元本返済の据置き等、既存の借入条件について債務者に有利となる変更が該当します。
債務減免等の抜本的な金融支援を求めるタイミング
中小企業者は、
- 条件緩和を受け、収益力の回復に努めても、なお、金融債務全額の返済が困難であり、やむを得ない場合には、事業再生を図るために必要かつ合理的な範囲で、金融債務の減免その他債務の資本化等(DESを含む)の要請を検討するものとされます。
なお、このとき中小企業者は、経営責任と株主責任を明確化する必要があります。
ただし、これは必ずしも経営者の退任が必須ということではなく、状況によっては役員報酬の削減、経営者貸付の債権放棄、私財提供や支配株主からの離脱などによる対応でも可能とされています。
上記の対応策を講じても、なお事業再生が困難な場合
中小企業者は、以上の対応をしても、なお事業再生が困難である場合には、スポンサーによる支援や経営の共同化ができないかを検討するものとされます。
また、スポンサーによる支援を求める際には、金融機関や実務専門家の支援・助言を得つつ、透明性のある手続でスポンサーの選定に努めることが必要となります。
これらの対応策を講じても、なお事業再生が困難な場合
中小企業者は、条件緩和や債務減免等の金融支援を受け、収益力の回復に努めてもなお、赤字が継続し、資金流出を止めることができないときには、事業廃止(廃業)を検討するものとされます。
この場合の対策としては
- スポンサー支援により事業継続を図ることができる場合には、スポンサーへの事業譲渡等
- スポンサーによる支援も得られる見込みのない場合には、早期に事業を廃止し、清算するなどを検討することとなります。
事業再生計画成立後のフォローアップについて
事業再生計画成立後においては、中小企業では
- 事業再生計画の実行及び達成に誠実に努める
- 計画の実行期間中は、信頼性の高い経営情報等を開示・説明する
ものとされています。
また、金融機関については、「実務専門家等と協力しながら、事業再生計画の達成状況を継続的にモニタリングする」「経営相談や経営指導を行うなど、達成状況を適切に管理する」などの対応が求められています。
なお、この場合のモニタリングについては「事業再生計画実行開始年度から起算して、概ね3事業年度を経過するまで」に行うことが望ましいとされています。
中小企業の事業再生等のための私的整理手続(中小企業版私的整理手続)
中小企業の事業再生等のための私的整理手続とは?
本ガイドライン第三部においては、具体的な私的手続きの方法を定めています。
ガイドラインでは、私的整理手続について
「経営困難な状況にある中小企業者である債務者を対象に、破産手続、民事再生手続等の法的整理手続によらずに、債務者である中小企業者と債権者である金融機関等の間の合意に基づき、債務について返済猶予や債務減免等を受けることにより、当該中小企業者の円滑な事業再生や廃業を行うことを目的とする」
とされています。
また、このガイドラインにおいては、私的整理手続として
- 中小企業者が事業再生を図る場合の手続(再生型)
- 廃業をする場合の手続(廃業型)
の2つのパターンについて定めており、それぞれについて異なった手続きが適用されます。
ただし、本私的手続きは、中小企業者が私的整理を公正かつ迅速に行うための準則であり、法的拘束力はないことに注意が必要です。
① 再生型私的整理手続の対象となる中小企業者の要件
本私的整理手続のうち、「再生型私的整理手続」は、以下のすべての要件を満たす中小企業者を対象に適用されます。
- 収益力の低下や財務内容、資金繰りの悪化等により経営困難な状況に陥っており、自助
努力のみによる事業再生が困難であること。 - 対象債権者に対して経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示
していること。 - 中小企業者及び中小企業者の保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、
そのおそれもないこと。
② 廃業型私的整理手続の対象となる中小企業者の要件
本私的整理手続のうち、「廃業型私的整理手続」は、以下のすべての要件を満たす中小企業者が適用対象となります。
- 過大な債務を負い、既に発生している債務を弁済することができないこと、または近い将来において既存の債務を弁済することができないことが確実と見込まれること
- 円滑かつ計画的な廃業を行うことにより、中小企業者の従業員に転職の機会を確保できる可能性があり、経営者等においても創業や就業等の再スタートの可能性があるなど、早期廃業の合理性が認められること。
- 対象債権者に対して経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること。
- 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと。
生型私的整理の手順について
本ガイドラインによる私的整理手続きには、再生型と廃業型がありますが、ここでは再生型手続きの手順について解説いたします。
再生型私的整理の開始について
① 支援専門家の選定
中小企業者は、再生型私的整理手続の利用を検討する場合、第三者の支援専門家の候補者を公表されたリストから選定します。なお、この場合の支援専門家等は、弁護士、公認会計士等の専門家であって、整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得たものであることを要します。
② 再生型私的整理手続の申し出
中小企業者は、金融機関などの主要債権者に対して、再生型私的整理手続を検討している旨を申し出るとともに、第三者支援専門家の選任について、主要債権者全員からの同意を得ます。(ただし、対象債権者の全員から同意を得た場合は、リストにない第三者支援専門家を選定することも可能)
以上の手続きを経たうえで、中小企業者は、第三者支援専門家に支援を申し出ることができます。
返済の一時停止の要請
中小企業者は、上記②以降のいずれかのタイミングで必要があるときは、対象債権者に対して返済の一時停止の要請を行うことができ、この場合、対象債権者は、以下のすべての要件を充足する場合には、一時停止の要請に誠実に対応するものとされます。
<返済の一時停止のための要件>
- 一時停止要請が書面によるものであり、かつ、すべての対象債権者に対して同時に行われていること
- 中小企業者が、手続開始前から財務状況の開示等に誠実に対応し、対象債権者との間で良好な取引関係が構築されていること。
- 事業再生計画案に債務減免等の要請が含まれる可能性のある場合は、再生の基本方針が対象債権者に示されていること。
事業再生計画案の立案
中小企業者は、相当の期間内に、一定の内容を含む事業再生計画案を作成します。なお、この事業再生計画案は、次の内容を含んだものでなければなりません。
<事業再生計画の主な内容>
① ガイドラインにより定められた一定の項目が記載されていること
② 実質的に債務超過である場合は、「事業再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から5年以内」を目途に実質的な債務超過を解消する内容とすること
③ 経常利益が赤字である場合は、「事業再生計画成立後最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年以内を目途に黒字に転換する」内容であること
④ 「事業再生計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下」となる内容であること
⑤ 対象債権者に対して金融支援を要請する場合には、「経営責任の明確化を図る」内容とすること
⑥ 対象債権者に対して債務減免等を要請する場合には、「株主責任の明確化を図る内容とするとともに、経営者保証があるときは、保証人の資産等の開示と保証債務の整理方針を明らかにする」こと
⑦ 事業再生計画案における権利関係の調整は、債権者間で平等であること
⑧ 債務減免等を要請する内容を含む事業再生計画案である場合にあっては、破産手続で保障されるべき清算価値よりも多くの回収を得られる見込みがあること
⑨ 必要に応じて、地域経済の発展等、地域経済への影響も鑑みた内容とすること
ただし、債務者が一定規模以下の小規模事業者である場合には、さらに要件が緩和された内容とすることができます。
事業再生計画案の調査報告
第三者支援専門家は、公平な立場で事業の収益性や将来性等を考慮して、事業再生計画案について調査し、調査報告書を作成の上、対象債権者に提出します。
ただし、債務減免等を要請する内容を含む事業再生計画案の場合は、第三者支援専門家には弁護士を含むものとします。
債権者会議の開催と再生計画の成立
中小企業者により事業再生計画案が作成された後、中小企業者、主要債権者及び第三者支援専門家が協力の上、原則としてすべての対象債権者による債権者会議を開催します。すべての対象債権者が、事業再生計画案について同意し、第三者支援専門家がその旨を文書等により確認した時点で事業再生計画が成立します。
ただし、事業再生計画案について全ての対象債権者から同意を得ることができないことが明確となった場合は、第三者支援専門家は、本手続を終了させ、本手続が終了時には、対象債権者は返済の一時停止を終了することができます。
事業再生計画成立後のモニタリング
外部専門家や主要債権者は、事業再生計画成立後の中小企業者の事業再生計画達成状況等について、原則、事業再生計画が成立してから概ね3事業年度を目途に、定期的にモニタリングを行います。
事業再生計画の変更等
モニタリングの結果、事業再生計画と実績の乖離が大きい場合は、中小企業者・主要債権者は乖離の原因を分析し、必要に応じて事業再生計画の変更や抜本再建、法的整理手続、廃業等への移行などを検討します。
ガイドラインの作成に関する支援について
認定支援機関による本ガイドラインの計画作成を行う場合には、その費用の一部を補助する制度を利用することができます。
事業再生計画策定支援
中小企業が本ガイドラインによる事業再生計画策定支援(再生型私的整理)を認定支援機関の支援にもとづき行った場合には、以下の金額が補助されます。
中小版GL枠 | 補助対象経費 | 補助率 | 備 考 |
---|---|---|---|
DD費用等 | 2/3(上限300万円) | 中小企業の事業再生等のための私的整理手続に基づいた取組であることが必要。第三者支援専門家費用も補助対象。 | |
計画策定支援費用 | 2/3(上限300万円) | ||
伴走支援費用 | 2/3(上限100万円) |
「中小企業活性化パッケージ」とは?
「中小企業活性化パッケージ」とは2022.03.04に経済産業庁・金融庁・財務省の3省庁が共同で中小企業向けの支援策をまとめたもので、中小企業の収益力改善等を目的に作成されました。
施策は大きく「コロナ資金繰り支援の継続」と、「中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援」の2つから構成され、具体的な内容は以下の通りとなっています。
【コロナ資金繰り支援パッケージ】
① セーフティネット保証4号の期限延長
② 政府系金融機関による実質無利子・無担保融資の継続等
③ 新型コロナ対策資本性劣後ローン(日本政策金融公庫)
【収益力改善等支援パッケージ】
④ 認定支援機関の伴走支援強化
⑤ 中小企業再生協議会による収益力改善支援強化
⑥ 「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の策定・活用
⑦ 中小企業再生ファンドの拡充
⑧ 再生事業者の収益力改善支援の拡充
⑨ 個人破産回避に向けたルールの明確化
⑩ 再チャレンジ支援の拡充
⑪ 収益力改善・事業再生・再チャレンジの一元的な支援体制の構築
「コロナ資金繰り支援パッケージ」は、セーフティネット4号の期間延長や政府系金融機関による実質無利子・無担保融資の継続など、資金支援を中心としたものとなります。
これに対して「収益力改善等支援パッケージ」は、中小企業活性化協議会による収益力改善支援強化や認定支援機関の伴走支援強化、「事業再生等に関するガイドライン」の策定など、主に経営改善や事業再生に関する支援を目的とした内容となっています。
まとめ
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」は、それまでに定められた「私的整理に関するガイドライン」の内容をさらに詳細・具体的にしたものであり、平時や有事における中小企業者や金融機関がとるべき対応についてまとめたものとなっています。
このガイドラインでは、中小企業がどのような場合に支援を求め、その際には何をすべきかといった具体的な対応について踏み込んだ記載がされているため、資金繰りが厳しくなってきたという企業がすぐに行動しやすいものといえます。
また、支援にあたって必要となる事業計画書についても、専門家の支援や必要経費の補助が受けられる体制が整っているため、経営の立て直しをお考えの方は早めに相談されることをおすすめします。
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