最速で御社の経営計画書を作成する「経営計画書サンプル」
中小企業では、少しの経営の変化で資金繰りが厳しくなりやすいですが、その中でもっとも手軽に利用できる資金調達の方法が「金融機関からの借入れ」です。
しかし、借入れには金融機関による審査があるため、誰もが希望する額の融資を受けられるわけではありません。
通常、融資の審査においては、「借入れの理由に妥当性があるか?」「これまでの返済実績はどうなっているか?」「間違いなく返済ができるか?」などがチェックの対象となりますが、これらの部分に問題があると「借りにくい企業」となってしまいます。
この記事では「銀行融資でどのような点が審査されているのか?」や「どうすれば審査に通りやすくなるか?」といった、融資を成功させる上で欠かせないポイントをご説明します。
審査における審査基準とは?
融資の審査では多くの項目について調査が行われますが、どの銀行でも審査のポイントはある程度共通しているため、このポイントをあらかじめ把握し、対策を立てておくことで、より審査に通りやすくなるといえます。
主な融資審査のポイントとしては、次のようなものがあります。
- 借入れの目的や資金使途、申込額の妥当性
- 企業の財務内容(決算書の内容)
- 過去の経歴や返済の実績
- 最近の経営の状況
- 個人情報の状況
しかし、これらのすべての項目をいきなり改善することはできませんし、またこれらの改善をするには、具体的にどのような対応をすべきかについても知っておく必要があります。
審査項目の改善をする場合には、主に3つの項目に集中して対策することが効果的となります。
① 財務内容の改善
② 事業計画書の作成
③ 金融機関とのコミュニケーションの強化
④ 各種支援策の活用
⑤ 融資が出やすい制度を利用する
① 財務内容の改善について
融資は債務者区分や銀行格付の高い企業が有利
銀行が企業に融資をする際には、その企業を一定の基準で評価し、内容に応じたランク付けを行っています。その中でも、もっとも基本的な基準となるのが債務者区分です。
この債務者区分とは、本来、金融庁が金融機関の貸し出しの健全性を検査するために設けた基準ですが、金融機関がこれを意識した融資をしなければならなくなった結果、企業への貸し出しについても適用されることとなりました。
この債務者区分は、貸出先企業の状況に応じて、以下の通りに区分されています。
- 正常先・・・業績が良好であり、財務内容にも特段の問題がない
- 要注意先・・・業績低調、延滞など、今後の管理に注意を要する
- 要管理先・・・融資支払いについてリスケジュールをしている
- 破綻懸念先・・・現在は経営破綻の状況にないが、今後、破綻が懸念される
- 実質破綻先・・・法的・形式的な経営破綻の事実はないが、実質的に破綻状態
この中で、問題なく融資が受けられるのは「正常先」区分だけであり、要注意先になると次第に融資を受けるのが難しくなってきます。
また、融資の支払いの延滞が一定期間以上続いたり、リスケジュールをしている場合には「要管理先」に区分されますが、この区分に該当する場合には、原則新規貸し出しには応じてもらえなくなります。
そのため、自社が現在、どの区分に該当しているかを確認し、その位置づけを明確にすることが融資対策の基本となります。この債務者区分は金融機関に聞けば教えてもらえる場合もありますが、これを顧客に明かさない金融機関もあるため、その場合にはある程度自分で予測しなければなりません。
その場合の目安としては、上記の基準を参考にしていただければと思いますが、一般的には「2期以上の連続赤字」や「短期間での2回以上の延滞」がある場合や「債務超過となっている場合」には、要注意以下となる可能性が高いといえます。
なお、金融検査マニュアルは、2019年12月に廃止されましたが、金融機関では現時点でも上記の債務者区分にもとづいた運用を行っていることから、この基準は現在においてまだ重要な意味を持っているといえます。
また、金融庁ではこの区分の判定にあたって参考となる指針等(金融検査マニュアル中小企業版や各種通達等)を発出してきましたが、これらの考えは現在でも有効なものとされています。
このように債務者区分が高い企業は、安定・安全な融資先として、低い金利での貸し出しや、高額な融資をうけやすくなる一方、低い区分の企業では金利が高くなったり、希望の額の融資が受けにくくなったりするため、融資を受けるためには、まずはこの区分の改善を図る必要があります。
貸借対照表の中身に注意する
金融機関が企業の財務内容を審査する場合には、必ず決算書にもとづく評価を行いますが、その際には貸借対照表と損益計算書が使われます。
これらの資料で評価される主な項目としては、次のようなものがあります。
<貸借対照表>
- 現金の保有高とその増減
- 買掛資産とその増減
- 売掛資産とその増減
- 固有資産の状況
- 会社から代表者に対する貸付金とその増減
- 負債の額とその増減
- 債務超過となっているかどうか、資本金の額(利益剰余金等を含む)
<損益計算書>
- 売上高と原価とその増減
- 営業利益とその増減
- 人件費や家賃、その他の経費額とその増減
- 利息の支払い額の増減
- 経常利益額とその増減
- 税引き前利益額とその増減
貸借対照表が会社の設立時から直近までの財産や負債の状況を表すのに対し、損益計算書はその期だけの損益状況を表している点に違いがあります。損益計算書で、とくにチェックされやすいのが、「営業利益」と「経常利益」です。「営業利益」は、売上げから原価と販管費を差し引いた時点での利益です。なぜ、これが重視されるかといえば、この利益が会社の本業での儲けを表すものだからです。そのため営業利益が赤字となっている企業は、通常、融資を受けることができません。一方、「経常利益」は、営業利益から本業以外の利益や損失(株の売却など)を加減した利益です。これを見ればその企業が経常的にどの程度の利益を上げているかがわかるため、融資をする際の目安とされます。したがって、融資の審査では、この2つの利益が「黒字となっているか?」「返済が可能となるだけの額を確保できているか?」といったことが重要となります。
また、「貸借対照表」についてはその中身が重点的にチェックされます。金融機関では、企業の貸借対照表をそのままの形ではなく、その中身を実態に近い形に置きかえた上で審査を行っています。このようにして作られた貸借対照表を「実体的貸借対照表」といいます。たとえば、決算書では有価証券の金額が1,000万円となっていても、時価評価では500万円の価値しかないと判断された場合には、これを500万円として算定します。このように資産について減額の査定がされた場合には、その減額分は資本金から差し引かれることとなるため、減らされる額が大きい場合や、資本金が少ない場合には債務超過となりやすくなります。また、 繰延資産などの実質的な価値がない科目はこれを0として評価し、会社から代表者への貸付金のうち長期間にわたって返済されていない、もしくは利息の支払いがされていないものなどは、これらも減額査定の対象とします。
このように貸借対照表については、実質的な資産価値に見直した上で、「貸借対照表の純資産がプラスとなっているか?」「勘定科目の内容に問題がないか?」などが審査されます。
事業計画書の作成
事業計画書作成の重要性について
融資の申込み時には、「融資申込証」と「その他の資料」で借入れをし、初回の申込の時以外は、事業計画書を提出しないのが一般的です。しかし、少しでも融資の額や確率を高めるのであれば、できるだけ事業計画書を提出すべきといえます。
通常、融資申込書に記入する項目は、企業の属性情報の他に「借入れの目的」「希望する金額」「返済期間」程度しかありません。しかしこれでは「具体的にどのような計画にもとづいて借入れをする必要があるのか?」「今後の事業の見通しがどうなっているのか?」「返済原資をどのように用意するのか?」ということがわかりません。
これを補うのが「事業計画書」です。
また、金融庁も適切な事業計画書を提出した企業については、できるだけその内容に沿った支援をすべきとしています。そのため、積極的に事業計画書を提出した場合には、何もしない時よりも融資の額や確率が高くなりやすいといえます。ただし、事業計画書は単にこれを提出すればよいというわけではなく、金融機関に評価されるためには、以下の点を満たしたものを作成する必要があります。
- 借入れの目的と用途が妥当であること。
- 間違いなく返済ができる利益を出せる計画となっていること
- 計画全体について、整合性や信ぴょう性があること
- 以上のことを証明できるエビデンスがあること
これらの要件を満たした事業計画書を作成するのが難しいという場合もありますが、それでもできるだけこれらのポイントに沿った計画を賛成し、提出することで、金融機関の評価や見られ方を改善できる可能性が高まります。
金融機関とのコミュニケーションの強化
スムーズに融資を受けるには、日常の金融機関とのコミュニケーションが重要となります。
企業の経営者の中には、「できるだけ、必要な時以外は金融機関に顔を出したくない」という方も多いですが、それでは金融機関と良好なコミュニケーションをとることはできません。
金融庁は、金融機関に対して、「貸出先企業との円滑なコミュニケーションを通じて、詳細な情報や経営者の考え方を収集し、それを貸付の判断に生かすこと」および「円滑なコミュニケーションや情報開示を行っている企業については、積極的に支援すること」を明確にしています。
したがって、何か都合の悪いことを知られるのではないかと金融機関とのコミュニケーションを断ってしまうのではなく、常日頃から情報交換や相談を行いオープンにした方が、金融機関の支援や協力が得やすくなり、融資審査においても好影響となります。
金融機関とのコミュニケーションを強化するうえで、行った方がよいこととしては次のようなものがあります。
- 定期的な決算書の提出
- 資金繰り表の提出
- 経営問題に関する相談
企業には、融資を申し込むときにだけ決算書を提出するところが多いですが、それでは不十分です。金融機関では、継続的な企業の財務状況を知りたいと考えていますが、これでは数年分の決算書をまとめて提出することとなってしまいます。決算書の提出は金融機関とのコミュニケーションを円滑にするうえで、最低限のものとなるので、決算書はまとめて提出するのではなく、毎期ごとに・作成した時点で提出する必要があります。
なお、金融機関では、融資の時だけでなく、その後の企業の資金繰りの状況についても気にしています。そのため、設備資金など長期で借入れをした場合には、その後の事業や資金繰りの状況についても、定期的に報告すべきといえます。事業の進捗や資金繰り状況が悪くなったときにそれを金融機関に報告しない場合には、本当に資金に行き詰って追加融資が必要となった場合に、支援を受けることができなくなります。
関連記事:資金繰り表の作り方!その基本や活かし方をわかりやすく解説
しかし、日ごろから定期的な報告をしている場合には、悪化の初期の段階で金融機関もそれに気づくことができるため、適切なアドバイスや貸し出しの協力がしやすくなります。
各種支援策の活用
企業が融資を受けるときには、国や自治体の支援策を利用すると有利になりやすくなります。そのまま金融機関に申し込んだ場合には難しい案件でも、国等の支援機関を通すことで、融資の取り上げや審査がしやすくなるからです。
このような支援制度には、以下のようなものがあります。
伴走支援型特別保証制度
この「伴走支援型特別保証制度」とは、一定の要件を満たした中小企業者が、金融機関との対話を通じてコロナ禍を乗り越えるための「経営行動計画書」を作成し、金融機関による伴走支援を受けることで、借入時の信用保証料を大幅に引き下げる制度です。
この制度の概要は、以下の通りとなります。
- 保証限度額 4,000万円
- 保証期間 10年以内
- 据置期間 5年以内
- 金 利 金融機関所定
- 保証料率 0.2%(国による補助前は原則0.85%)
- 売上減少要件 ▲15%以上
- その他
セーフティネット保証4号、5号、危機関連保証のいずれかの認定を受けていること
経営行動計画書を作成すること
金融機関が継続的な伴走支援をすること(原則四半期に1度) 等
経営改善サポート保証(感染症対応型)制度
「経営改善サポート保証」は、経営サポート会議※や中小企業再生支援協議会等の支援により作成した再生計画等にもとづき、事業再生を実行するために必要な資金の借入れの保証の据置期間を最大5年に緩和したうえで、信用保証料の事業者負担を大幅に引き下げる措置です。
※経営サポート会議:金融機関等の関係者により個別事業者の支援の方向性について意見交換する場で、信用保証協会等を事務局とした支援の枠組みです。
- 保証限度額 2億8,000万円(一般の普通・無担保保証とは別枠)
- 保証割合 責任共有保証(80%保証)。ただし100%保証およびコロナ禍のセーフティネット保証5号からの借換えについては100%保証。
- 保証料率 0.2% (国による補助前は原則0.8%-1.0%)
- 金 利 金融機関所定
- 保証期間 15年以内
- 据置期間 5年以内
融資が出やすい制度を利用する
金融機関からの融資を受けやすくするには、「融資が出やすい融資制度を利用する」ということも効果的となります。たとえば、日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)では、技術・ノウハウ等に新規性がみられる方が対象となるため、通常の融資よりも審査の難易度が高くなっています。また、マル経融資は、低金利、無担保無保証で利用できる融資制度ですが、事前に商工会議所や商工会の審査を受けて、それを通過する必要があります。そのため、商工会等と公庫で2回の審査を受ける必要がありますが、商工会等の推薦を得た場合でも、公庫の審査で落とされることもあります。したがって、これら融資は通常のものと比べて、利用しにくいといえます。
これに対して「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「セーフティネット保証4号による融資」「小口零細企業保証制度」などは、さまざまな理由から、条件が優遇されていたり、融資が出やすいものとなっています。たとえば、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「セーフティネット保証4号による融資」はコロナの影響により売り上げが低下した企業の救済対策として行われているものです。また、「小口零細企業保証制度」は、一定の規模以下の企業を対象に有利な条件で借入れができるものとなっています。とくに「セーフティネット保証4号による融資」「小口フリーランス(全国共通)」については、政策的な理由から責任共有制度の対象外となっているため、信用保証協会による100%保証を受けることができます。
※「責任共有制度」とは、中小企業への融資にあたって、信用保証協会と金融機関がそれぞれリスクを共有する制度です。そのため、通常の制度融資では、融資先の企業が返済不能となったときには、信用保証協会が80%、融資をした金融機関が20%の責任を負います。
これらの融資制度は以上の理由から、とくに借入れがしやすいものとなっています。したがって、まだ、これらの制度を利用していない場合には、まずはこれらを利用することで、通常よりも融資の額や確率を上げることが可能となります。
セーフティネット保証4号による融資
セーフティネット保証とは、「自然災害等の突発的事由による売上高の減少」により、経営の安定に支障をきたしている事業者が市区町村の認定を受けることで、一般保証とは別枠で最大2億8,000万円の信用保証を受けることができる制度です。
通常、信用保証協会の保証については一般保証枠を利用することができますが、セーフティネット保証を利用することで、100%の信用保証協会の保証を受けることができ、さらに別枠の保証額を追加で利用することかできます。
なお、セーフティネット保証4号については、「中小企業活性化パッケージ」により申請期限が2022年6月1日まで延長されましたが、その後さらに期間が延長され、現在は2022年12月31日までとなっています。
<利用条件>
- 申請者が指定を受けた地域において、1年間以上継続して事業を行っていること。
- 「新型コロナウイルス感染症」等の発生に起因して、最近1か月間の売上高又は販売数量が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して20%以上減少することが見込まれること。
<保証上限減額>
普通保証 2億円以内 無担保保証 8,000万円以内
<保証割合>
100%
※なお、セーフティネット保証を利用する場合には、主たる事業所所在地の市区町村から認定を受ける必要があります。
小口零細企業保証制度
小口零細企業保証制度は、金融環境の変化による影響を受けやすい小規模企業者を対象とした、責任共有制度対象外となる全国統一の保証制度【小口零細企業保証制度】(略称:全国小口)です。マル区小口や小口フリーランスなどのように、主宰する自治体により名称が異なるので注意してください。
<利用条件>
この融資を含め、信用保証協会の保証付融資の合計残高が2,000万円以下の小規模企業者
<融資限度額>
2,000万円以内
<返済期間>
運転資金7年以内 設備資金10年以内(いずれも、据置期間は1年以内)
<利 率>
主宰する自治体により異なる 東京都の場合:1.9%~2.5%%以内 又は変動利率(令和4年9月時点)
<担保・保証人>
原則、不要 但し、代表者については、連帯保証が必要)
まとめ
金融機関の融資では、一定の基準にしたがって審査が行われるため、審査の基準やポイントを理解し、それに沿った対策をすることで、より融資を受けやすくすることができます。
とくに企業の財務内容や債務者区分などは、審査に大きな影響を与えますが、その改善はすぐにできるものではないため、時間をかけて行っていく必要があります。
また、それ以外にも、事業計画書の作成や金融機関とのコミュニケーションの強化なども、融資を出やすくするうえでは重要な対策となります。
さらに、現在利用できる各種支援策の活用や、融資が出やすい制度を併用することで、現状よりもさらに融資の確率を高めることができるようになるため、計画的に事業に取り入れて資金調達に役立てるようにしましょう。
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