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通常、企業が金融機関から融資を受ける際には、経営者個人が会社の債務について連帯保証をするのが一般的です。
しかし、経営者保証は経営者にかかる負担が大きいだけでなく、積極的な経営への意欲を阻害する、事業承継時における障害になるなどのデメリットが指摘されていました。これらの障害への対応として、新たに経営者保証に関するルールを定めたのが本ガイドラインとなります。
この記事では、経営者保証に関するガイドラインの制定の経緯や、概要、主なポイントについてについて解説いたします。
経営者保証ガイドラインについて
経営者ガイドラインの概要と成立の背景
「経営者保証」とは、企業が金融機関から融資を受けるときに、経営者個人が会社の連帯保証人となることを意味します。
一般的な法人が事業資金の融資を受ける際には、経営者が連帯保証人となることが求められます。そのため、もし、企業が倒産やその他の理由で事業継続ができなくなったり、支払いが不可能となった場合には、経営者個人が企業に代わってその債務を返済しなくてはなりません。
このような「経営者保証」には、「経営者の責任を明確化することでモラルハザードを防ぐ」や「資金回収の安全性を間接的に担保することで資金調達をしやすくする」といったプラスの面があります。
しかし、一方では、「経営者が保証を懸念し、思い切った事業展開や資金調達をしにくくなる」、「早期の事業再生や円滑な事業承継を妨げる」という点も問題となっていました。
これらの課題の解決策として、全国銀行協会と日本商工会議所が平成25年12月5日公表、平成26年2月1日より適用を開始したのが「経営者保証に関するガイドライン」です。
本ガイドラインにより、
- 新規借入時や借換え時における経営者保証の解除をするためのスキーム
- 経営者に保証を求める際のルール
が整備されました。
また、これ以外にも事業承継時に経営者保証が障害となっている方については「事業承継ガイドライン」が、廃業時における保証債務の履行についての考え方については「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」がそれぞれ定められました。
なお、本ガイドラインに法的拘束力はありませんが、中小企業・経営者・金融機関等はこれを尊重し、遵守するものとされています。
適用される状況 | 適用の対象 | 適用されるガイドラインの種類 | |
新規借入時 借換え時 | 新規に借入れを行う際や既存の借入れについて経営者保証を外してほしい方 | 経営者保証に関するガイドライン | 同 左 |
事業承継時 | 事業承継を行う際に経営者保証が障害となっている方 | 事業承継ガイドライン | |
経営者保証の履行時 | 保証債務の整理を経営者保証ガイドラインにより行いたい方 | 廃業時における『経営者保証に関するガイドライン |
経営者保証ガイドラインの認知・活用の状況
令和元年7月に中小企業基盤整備機構が行った「平成30年度 経営者保証に関するガイドライン認知度調査結果」によれば、企業による本ガイドラインに対する認知度や活用の状況は以下の通りとなりました。
① 経営者保証に関するガイドラインの認知度については、
「聞いたことまたは見たことはある」 46.5%
「聞いたことも見たこともない」 53.5%
② 経営者保証の提供状況については
「すべての借入れに提供」 51.9%
「一部の借入れに提供」 32.4%
「すべての借入れに提供していない」 15.7%
③ 経営者保証解除に向けた申し出・相談状況
「経営者保証の解除の申し出・相談を行った」 18.7%
「申し出・相談を行っていない」 81.3%
④ 解除申し出の結果
「経営者保証が解除された」 48.6%
「新たな融資条件提示とともに、経営者保証を解除できると判断された」 5.1%
「経営者保証の額が減額された」 4.8%
「代替としてABLの活用を融資条件に、経営者保証を解除できると判断された」1.3%
「経営者保証は解除できないが、理由について丁寧な説明があった」 16.8%
「経営者保証は解除できず、理由について丁寧な説明はなかった」 23.4%
⑤ 経営者保証が解除された理由
「財務内容・業績が安定または良好であるため」 71.4%
「金融機関への適時適切な情報開示が出来ていたため」 44.0%
「会社と個人の資産・経理の分離が出来ていたため」 32.3%
「金融機関との取引年数が長いため」 28.0%
「他行で経営者保証の解除ができたため」 20.2% その他
⑥ 経営者保証が解除されなかった理由
「財務内容・業績が不十分」 52.0%
「他行が経営者保証を解除しないため」 23.7%
「会社と個人の資産・経理の分離が不充分」 15.0% その他
以上の結果から、約半数の企業が経営者保証に関するガイドラインを知っているものの、約8割の企業が具体的な申し出や相談をしていないことがわかります。
しかし、申し出をした企業の約6割が経営者保証の解除がされた、もしくは何らかの前向きな回答を得たとなっていることから、まずはガイドラインの内容を自身で確認した上で、申し込みや相談をすることがはじめにすべき対応といえます。
経営者保証ガイドラインの適用のメリット
経営者保証ガイドラインの適用を受けることで、次のようなメリットが得られる可能性があります。
経営者の保証なしで金融機関から融資が受けられる
上場企業などの大企業では、経営者が個人保証をすることなく融資を受けることができます。また、代表者の死亡や交代があった場合には、追加で新代表者に保証を求めるということもありません。このように大企業では、企業と代表者個人の責任が分離されています。
しかし、通常の中小企業は、社会的信用力が低いため、金融機関は貸金保全の一環として、新規の融資や借換え時に経営者の連帯保証を求めるとともに、経営者の変更があったときには追加で新代表者も保証人とすることが少なくありません。
また、代表者に限らず、代表者の配偶者を保証人とすることもあります。
経営者が個人保証をすることは、その後の経営のリスクの増加につながるため、思い切った運営や多額の借入れを躊躇する要因となり、せっかくの商機や業績拡大のチャンスを逃してしまう可能性があります。
けれど、本ガイドラインを活用することで、経営者保証が不要の借入れや停止条件付保証契約※などをすることができるようになります。
※ 「停止条件付保証契約」とは、中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)に違反しない限り、保証債務の効力が発生しない旨の契約をいいます。
事業承継がしやすくなる
現在、多くの中小企業では、「後継者が事業を継がない」、「跡を継ぐ事業者がいない」ということが大きな問題となっています。
中小企業庁が平成28年11月に発表した「事業承継に関する現状と課題について」によれば、60歳以上の経営者では50%超が廃業を予定しており、とくに個人事業者においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもり」と回答しています。
廃業の理由としては、「当初から自分の代でやめようと思っていた」が38.2%で最も多く、「事業に将来性がない」が27.9%で続きます。また、「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見つからない」などの後継者難を理由とする廃業も合計で28.6%を占めています。
このような状況についてはいくつもの原因が考えられますが、その中でも経営者保証の問題は大きな要因となっています。
これまで中小企業においては、事業承継時に後継者が前経営者と入れ替えで連帯保証人となる、もしくは前経営者とともに連帯保証人となるということが行われてきました。
とくに利益率の低い企業や事業の将来性が低い企業では、経営破綻や廃業のリスクが高かったため、その分保証責任が現実化する可能性が高い状況にあり、これが承継をためらわせる理由となっていました。
けれど、本ガイドラインや事業承継ガイドラインを活用して、連帯保証の必要がなくなることにより、スムーズに事業承継をしやすくなります。
また、M&Aにより、事業を売却する場合には、経営者保証が残っているとそれが実行の支障となることがありますが、事前にこれを解除しておくことで円滑に手続きをすることができるだけでなく、企業価値を高めることにもつながります。
経営の健全化につながる
本ガイドラインの適用を受けるためには、一定の財務条件をクリアーする必要がありますが、この条件を満たした場合は財務内容が健全化するため、金融機関からの評価が高い企業となります。
また、それに伴い既存債務や今後に利用する融資について、金利等の条件の緩和も見込めるため、資金調達面において有利となります。
経営者の心理的負担を解消することができる
経営者が経営者保証をする場合には、それが大きな心理的重圧となります。そのため、事業拡大のチャンスや思い切った経営再建のチャンスがあっても、個人保証の負担がそれを躊躇させ、機会を活かせないということにつながります。
しかし、経営者保証が解除されることで、このような負担が無くなり、心理的な圧迫から解放されるため、積極的な経営をしやすくなります。
万が一の場合でも、再建がしやすくなる
万が一、企業が倒産した場合には、連帯保証をしている経営者は個人資産を引き当てとした弁済をしなければならないため、多くの場合、経営者も自己破産をしなければならなくなります。
しかし、本ガイドラインでは、このような場合でも、最低限の個人資産を残す方法について定めています。
- 経営者の債務整理の際に、一定の生計費を手元に残すことができる
- 華美でない自宅については差押えをせずに、経営者の生活基盤として残すことができる
- 従来の経営者が引き続き事業の経営をすることができる(通常は引責退任)
- 返済しきれない債務については、免除することも可能
このように本ガイドラインでは、倒産時における経営者の個人資産について一部財産の保有を定め、経営者の再建の道を開いています。
通常の保証と連帯保証はどう違う?
本ガイドラインで対象となっているのは、会社の債務に対する経営者個人の連帯保証です。しかし、通常の保証と連帯保証では、同じ保証という目的ではありますが、その性質や効果が大きく異なります。
ここでは、通常の保証と連帯保証とではどのような違いがあるのかについてご説明します。
通常の保証
通常の保証には、以下の3つの権利が認められています。
①「催告の抗弁権」(民法452条)
「催告の抗弁権」とは、債権者が保証人に支払いを請求してきた場合に、債務者が既に破産または、行方不明である場合を除き、「まずは債務者に請求してくれ」と主張することができる権利です。
②「検索の抗弁権」(民法453条)
「検索の抗弁権」とは、債務者に返済できるだけの財産があるにも関わらず、債務者が返済を拒んだため保証人に請求がされた場合に、保証人が「債務者に弁済をする資力があり、かつ、その執行が容易であること」を証明したときは、債権者はまず債務者の財産について執行をしなければならなくなるという権利です。
③「分別の利益」(民法427条・456条)
「分別の利益」(民法427条・456条)とは、保証人が複数いる場合に、それぞれの保証人が借入金全額の支払い義務を負うのではなく、保証人の人数で按分した金額だけを支払えばよいという権利です。
連帯保証人
連帯保証人には「催告の抗弁権」が認められていないため、債権者が債務者に請求をせず、いきなり連帯保証人に請求してきても、「まずは債務者に請求してくれ」と主張することができません。
また、「検索の抗弁権」も認められていないため、債務者に十分な財産があるにも関わらず返済を拒んでいる場合でも、債務者に代わって返済をしなければなりません。
最後の「分別の利益」については、たとえば、通常、600万円の債務があるケースで保証人が3人いるときは、各保証人は200万円を支払えばよく、残りの400万円については責任を免れます。
しかし、連帯保証人には分別の利益も認められていないため、たとえ連帯保証人が3人いたとしても、それぞれが1人で負債全額の600万円を返済する義務を負います。ただし、保証人の1人が仮に全額の返済をした場合には、後日、他の保証人に対して自己の負担分の200万円を超える分の支払いを求めることができます。
以上のように連帯保証人には、通常の保証人が有する抗弁権がないため、借入人本人とほぼ同様の責任を負うこととなります。
経営者保証ガイドラインの適用を受けるための3つの要件
経営者保証ガイドラインの適用を受けるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
法人と経営者が明確に区分・分離されていること
主たる債務者である企業が本ガイドラインの適用を受けるためには、法人の業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係を明確に区分・分離する必要があります。
たとえば、法人と経営者の間における役員報酬や賞与、配当、オーナーへの貸付などの資金の管理について、「社会通念上適切な範囲内」に収まる体制を整備することが求められます。
<資産分離の例>
経営者が法人の事業に必要な本社・工場・営業車等の資産を所有している場合、経営者の都合によるこれらの資産の売却や担保提供等を防ぐため、経営者の個人所有にせず、法人所有とする。
ただし、以下のように明確な分離が困難なケースについては、法人が経営者に「適切な賃料」を支払うことで法人と個人が分離しているものとみなされます。
- 自宅が店舗を兼ねている場合
- 経営者の都合により、経営者所有の資産の売却等が制限されている場合
- 経営者が所有する資産が法人の資金調達のために担保提供されている場合
- 自家用車が営業車を兼ねている場合など
<経理・家計の分離の例>
個人として消費した費用(飲食代等)について法人の経費処理としない、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付は行わないなど。
なお、上記のような対応を確保する手段としては、次のような対ことが有効とされます。
- 取締役会の設置
- 会計参与の設置
- 「中小企業の会計に関する基本要領」等に拠った信頼性のある計算書類の作成
起業の財務基盤の改善により信用力等を強化すること
企業は、経営者による保証を提供しなくとも円滑に資金の調達ができるよう、財務状況や経営成績を改善し、返済能力や信用力を強化すべきことが求められます。
これは、経営者個人の資産を返済の引き当てとせずとも、法人のみの資産や収益力だけで返済が可能となる体制を作ることを意味し、具体的には以下のような対応が求められます。
- 業績が堅調で十分な利益を確保しており、内部留保も十分であること
- 業績はやや不安定ではあっても、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能となること
- 内部留保は潤沢とはいえなくとも、好業績が続いており、今後も借入れを順調に返済していけるだけの利益を確保できる可能性が高いこと
適時・適切に財務情報が開示されていること
企業は、資産や負債の状況(経営者のものを含む)、事業計画や業績見通し、その進捗状況等について債権者から情報開示の要請があった場合には、これに対して正確かつ丁寧に信頼性の高い情報を開示・説明することが必要となります。
具体的には、以下のような対応が求められます。
- 貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、これら決算書上の各勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)をあわせて提出すること
- 期中の財務状況を確認するため、年に1回の本決算の報告のみでなく、試算表や資金繰り表等を定期的に提出すること
経営者保証を履行する場合の対応
経営者が個人保証をした場合の取り扱いは、以下の通りとなります。
保証人から請求できること
経営者が保証人となっている場合において、一定の要件を満たすときには、以下のような保証債務の整理を申し出ることができるものとされます。
- 一時停止等の要請への対応
- 従前の経営者による経営の継続
なお、主たる債務者が法的倒産手続の申立てを行ったことにより、債権者から保証債務の履行を求められた後においても、保証人は保証債務の整理の申し出を行うことができるものとされています。
経営者保証をした際の資産について
経営者が会社債務についての保証責任を負う場合、本ガイドラインを活用することで保証人に対し、次のような対応をすることができます。
<保証履行後も保証人の手元に残る資産について>
- 破産時の自由財産(99万円)は、原則として経営者の手元に残すことが可能です。
- 金融機関は、法人からの回収見込額が増加した場合、自由財産に加えて「一定期間の生活費(年齢等に応じて約100万円~360万円)」を経営者に残すことを検討できます。
- 金融機関は、「華美でない自宅」について、経営者が分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう検討することができます。
- 保証債務履行時点の資産で返済し切れない保証債務の残額については、免除することができます。
- 本社、工場等など、主たる債務者が実質的に事業を継続する上で最低限必要な資産が保証人の所有資産である場合は、原則として保証人が主たる債務者に対して当該資産を譲渡して法人の資産とすることにより、保証債務の返済原資から除外することができます。
なお、保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されません。
信用保証協会における保証人の取り扱いの変更について
信用保証協会では、これまで経営者保証人について保証の解除を認めていなかったため、これが原因となって事業の再建ができないということもありました。しかし、本ガイドラインが施行されたことにともない、経営者保証人に関する取り扱いを以下のように変更しました。
保証時の取扱い
次の①~④のいずれかに該当する法人の場合、経営者保証を不要とする保証の取扱いをすることが可能となります。
①金融機関連携型
取扱金融機関がプロパー融資について経営者保証を不要とし、担保による保全が図られていない場合であって、以下の要件を満たすこと
- 直近決算期において債務超過でないこと
- 直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと
- 法人と経営者の一体性解消等を図っている(または図ろうとしている)こと。
②財務要件型
直近決算期において特定社債保証制度(私募債)と同様の財務要件を満たしていること
③担保充足型
申込人または代表者本人が所有する不動産の担保提供があり、十分な保全が図られること
※ ただし、担保提供者が申込人以外の場合は、物上保証人となる必要があります。
④その他
個別の事案において、経営者保証を不要として取り扱うことが適切かつ合理的であると認められること
例
親会社の社員が新代表者に就任し、旧代表者が経営から離脱した上で、親会社の連帯保証が得られるケース
なお、経営者保証が付された既存の融資についても、上記①~④のいずれかに該当する場合には、新規の保証付融資へ借り換えることで経営者保証を解除することができます。
事業承継時の場合の取扱い
経営者の交代により事業承継をする場合には、原則として、経営者保証が付された既存融資について後継者(新経営者)の保証の追加は行いません。
ただし、事業承継時に前経営者の保証解除を希望するケースについては、既存融資について約定償還が見込まれる場合には、条件変更により後継者(新経営者)の保証を追加し、前経営者の保証を解除することができます。
なお、事業承継時においても、後継者(新経営者)の保証を追加することなく前経営者の保証を解除することができます。
経営者保証ガイドラインの活用事例
経営者保証ガイドラインについては、現在、金融庁から本ガイドラインを活用した事例が数多く公表されています。
ここでは、その代表的なものについてご紹介します。
ガイドラインの要件が充足されているため、経営者保証を求めなかった事例
宿泊業者から、新事業計画に関する10 億円の運転資金の申込みがあった際に
- 提出された事業計画の実現可能性が高いものであったこと
- 計算書類の作成について公認会計士による監査を受け、また、取締役会の適切な牽制機能発揮のため、親族以外の第三者から選任された取締役が取締役会に出席するなど、法人と経営者の関係の明確な区分・分離がなされていること
- 毎月の月初に自発的に前月の営業実績、資金繰り表、銀行取引状況表等を持参して経営状況の報告を行うとともに、公認会計士による適切な決算資料の作成を行うなど、情報開示に積極的であること
が評価され、申込みがあった10 億円のうち8 億円を無担保のプロパー融資で実行したケース
他の金融機関と協調して、経営者保証を求めなかった事例
段ボール紙の製造業者について、4 億円の協調融資を行う際に
- 対象企業は実質的なオーナー企業であるが、その親族は取締役に就任しておらず、適切な牽制機能が発揮されていること
- 企業から経営者への貸付等もなく、事業用資産はすべて法人所有であるなど、法人と経営者の関係の区分・分離が図られていること
- 法人単体での返済力も十分であること
などのことから、取引先金融機関で保証人を求めずに融資したケース
債務超過ではあるが、経営者保証を求めなかった事例
ガス設備工事の会社から省エネ設備の仕入のための新規融資の申込みがあった際に
- 対象企業の事業用資産は関連会社の所有であり、また、社外取締役や監査役といった外部からの適切な社内管理体制が整備されているなど、法人と経営者との関係の区分・分離がなされていること
- 現在、対象企業単体では債務超過(関連会社との連結では資産超過)であるが、業績が堅調であることから、利益による債務の返済が十分可能であり、2 年後の債務超過の解消も見込まれること
- 対象企業からは定期的に試算表及び銀行取引状況表の提出があり、適時適切な財務情報の開示が行われていること
などのことから、経営者保証を求めない融資をすることとしたケース
ガイドラインの要件を十分に満たしていないものの、事業性評価の内容や信用保証協会との連携により、新・旧経営者の保証を解除した事例
看板・店舗外装業者から、事業承継に伴い新・旧両経営者が保証人とさせられていたケースについて、当該業者からその解除を求められた件において
- 販路開拓支援、事業承継支援、外部専門家の活用提案を行うなど、取引先金融機関と良好な関係を構築できていたこと
- これまでは、既存借入金に信用保証協会の保証付借入があり、これについて経営者保証の解除が困難であったが、平成 30 年 4 月以降の信用保証制度の見直しを活用し、信用保証協会付借入れについても経営者保証の解除が可能となったこと
などの事情を勘案し、新旧経営者2名の保証解除を行ったケース
創業資金について、法人・個人の資産の分離が不十分であるが、経営者保証を求めなかった事例
新規飲食店において32 百万円の融資について無担保・無保証で融資をしてほしいとの依頼があった際に
- 県・市・支援機関の監修で策定された計画であり、実現性、将来のキャッシュフローに合理性が認められること
- 事業計画段階で、適切な情報開示を行っており、今後も継続的な開示が見込まれること
- 法人、個人の資産の分離が必ずしも十分でないものの、その必要性を経営者が認識し、事業計画でも分離に取り組むことが前提となっていること
- 産金官による地域連携サポートの一環であり、また、経営者に高い調理技術があり、経営のコンセプトも地域活性化を図るものであること
などが評価され、無担保・無保証で融資を行ったケース
まとめ
「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者による個人保証を必要としない融資を可能とする制度です。
このガイドラインを活用することで、経営者の保証なく借入れをすること等が可能となりますが、約半数の企業がこのガイドラインの存在を知らず、また、約8割の企業が具体的な申し込みや相談を行っていません。しかし、申込み等をした企業については約6割が経営者保証の解除や、何らかの前向きな対応を得ることに成功しています。経営者保証ガイドラインにより経営者保証の解除をするには、高いハードルがありますが、多くの企業で成果を上げつつありますので、まずは取引先の金融機関へ相談されることをおすすめします。