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中小企業においては、信用保証協会を利用されているところが少なくないと思います。しかし、融資の際には窓口の金融機関の対応ばかりを気にして、信用保証協会への配慮をおろそかにしているケースも見受けられます。
確かに資金を提供する金融機関に気を遣う必要はありますが、制度融資に代表される信用保証協会付融資では、最終的に保証をするかどうかを決定するのは信用保証協会です。そのため、その理解や協力なくして、融資を受けることはできません。
この記事では、信用保証協会の役割、重要性、効果的な対策について解説いたします。
信用保証協会とは?
信用保証協会の役割
信用保証協会は、信用保証協会法という特別法にもとづき、中小企業や個人事業主、創業者を対象として、円滑な資金調達を支援することを目的に設立された公的機関です。
創業者や中小企業などは信用力が低いため、通常の金融機関から十分な融資を受けるのが難しく、また、融資を受けるには、担保や保証人を求められるのが普通です。
しかし、信用保証協会が融資について公的な保証人となることで、これらの方であっても無担保無保証や低利での借り入れをすることができるようになります。
また、金融機関側においても、信用保証協会の保証が得られた場合には、融資先の企業が返済不能となった場合でも、信用保証協会によるが代位弁済を受けることができ、80~100%の資金の回収ができるので安心して融資できるというメリットがあります。
現在、信用保証協会は、47都道府県と4市(横浜市、川崎市、名古屋市、岐阜市)にあり、企業に対して地域密着型の保証業務を行っています。
なお、以前は大阪市信用保証協会がありましたが、平成26年に大阪府信用保証協会と統合し、大阪信用保証協会となりました。
信用保証協会の仕組み
信用保証制度は、基本的に中小企業、金融機関、信用保証協会の三者が当事者となり、下図のような仕組みで保証を行います。
① 企業が金融機関(または信用保証協会)へ融資(または保証)を申し込む。
② 金融機関の審査後、信用保証協会が審査をし、保証の諾否を決定する。
③ 保証が承諾された場合は、金融機関が融資を実行する。
④ 企業が金融機関へ借入金の返済をする。
⑤ 融資をした企業の返済が滞った場合、信用保証協会が企業に代わって金融機関へ借入金の弁済をする。(代位弁済)
⑥ 代位弁済後は、企業は借入金を信用保証協会へ返済する。
以上のように信用保証協会の保証のついた融資を利用する場合には、貸出先の金融機関だけでなく、信用保証協会の承諾が必要となります。そのため、金融機関の承諾が得られても、その後の審査で信用保証協会の承諾が得られない場合は、融資がされないことに注意が必要です。
信用保証協会の利用について
信用保証協会は中小企業の融資について保証をするという役割を果たしますが、その方法は大きく分けて2つあります。
① 制度融資について保証をする
信用保証協会が行う保証方法の一つ目が、「制度融資を通じた保証」です。
「制度融資」とは、都道府県や市町村などの自治体と信用保証協会および市中の金融機関が一体となって中小企業や創業者が借入れをしやすくするための、いわばパッケージ型の融資制度です。 ※上記図参照
制度融資は、ほぼすべての金融機関で利用できる(郵便局など一部金融機関を除く)ため、自分で利用したい金融機関から申し込むことができます。ただし、この場合の融資の資金は信用保証協会ではなく、その申込先の金融機関から出るものだということに注意してください。
よく、制度融資を利用された方の中には「信用保証協会から融資を受けた」と思っている人がいますが、これは間違いです。信用保証協会は、融資についての保証はしますが、融資そのものをすることはありません。融資をするのは、あくまでも金融機関ということとなります。
なお、制度融資における3者の役割は以下のとおりとなります。
- 行政(都道府県等):制度融資の設計と運用、監督をする
- 信用保証協会:企業に対して融資の保証をする
- 金融機関 :自分の資金を使って企業に融資をする
② 企業に対して直接、保証をする
信用保証協会の保証方法の二つ目が、「企業に対して、直接、保証をする」という方法です。これは制度融資のように融資と紐づけないで、単純に保証のみをするということを意味します。
信用保証協会では、企業向けに多くの種類の保証メニューを用意しています。企業はその中から自分で利用したいと思う保証を選んで、信用保証協会へ申込みをします。審査の結果、保証がOKとなった場合には、信用保証協会から「保証承諾書」が発行されるので、これを自分で融資を受けたいと思う金融機関へ提出して融資の申込みをします。
制度融資も単純な保証も、どちらも融資のために利用するという点では共通していますが、前者がはじめから融資とのパッケージとなっているのに対して、後者では融資手続きとは関係なしに保証だけをするという違いがあります。
では、どちらが使いやすいのかといえば、基本的には制度融資をおすすめします。
なぜなら、制度融資では金融機関に申し込むだけで融資と保証の手続きが一度にできるのに対して、保証のみを利用した場合には、信用保証協会へ保証を申込んで承諾を得た後、あらためて金融機関へ融資を申込むという手続きが必要だからです。また、後者の場合には、2回の手続きをする分、手間と時間がかかります。さらに、制度融資については、これを取り扱う自治体によっては、金利や保証料の割引といった独自の優遇を行っている場合がありますが、単純な保証についてはこのような制度は原則としてありません。このような理由から、制度融資の方が単に保証をうけるよりメリットが大きいといえます。
ただし、制度融資の中には自分が利用したい制度がない、もしくは必要な金額に対応する制度がないということもあるため、このような場合には「保証制度」を利用した方がよいケースもあります。
制度融資は地域によって中身が異なる
このように利便性に優れた制度融資ですが、注意しなければならない点もあります。それは、制度融資は、地域によって融資の内容や条件が異なるということです。
前述の通り、信用保証協会は、各都道府県と市町村ごとに設立・運営されています。そのため、たとえば、東京都渋谷区にある企業では「東京都」と「渋谷区」のいずれかの制度融資を利用することができます。しかし、東京都制度融資と渋谷区制度融資では、それぞれで取り扱っているメニューが異なりますし、また、同じ目的のメニューでも融資額や金利等の条件が異なります。たとえば、都・渋谷区のどちらにも創業者を対象とした制度がありますが、都では融資限度額が3,500万円であるのに対して、渋谷区では2,000万円となっています。けれど、利息については、都では1.9~2.5%なのに対して、渋谷区では1.7%のうち1.6%の補助があるため、実質的な本人負担は0.1%となります。このように同じ目的の融資であっても、制度融資を取り扱う行政が異なる場合には、内容に大きな違いが生じるということがお分かりいただけると思います。なお、渋谷区にあるこの企業が制度融資を利用する場合には、都か区のどちらかひとつを選んで申込みをしなければなりません。そのため、利用の際にはあらかじめ双方の制度の内容を比較し、どちらが有利なのかを判断した上で申し込む必要があります。
また、これは、都道府県が異なる場合でも、同じことがいえます。企業が東京に本店を、千葉県に支店や営業所を有している場合には、その企業は東京都と千葉のいずれかの制度融資を利用することができます。しかし、この場合でも利用できるのは、どちらか一方のみとなります。このように、通常の企業では都道府県か市区長町村のどちらかを選択して、制度融資を利用する必要があります。
信用保証協会の保証料について
信用保証協会を利用する場合には、金利とは別途に保証料を負担しなければなりません。これは単純な保証を利用する場合でも、制度融資を利用する場合でも同じです。しかし、この保証料は一律ではなく、申込企業の信用力により異なります。信用保証協会では、CRDという独自の与信システムを使って、申込企業のスコアリングを行い、9つの料率区分から企業の経営状況に応じて適用するものを決めていますが、通常の企業の保証料率は約1%程度となります。
したがって、制度融資等を利用する場合には「通常の金利+保証料」を負担しなければならないことに注意が必要です。
日本政策金融公庫と東京都信用保証協会の主な融資負担の比較
日本政策金融公庫 | 信用保証協会 | |
コロナ融資 | 1.22~2.10% | 1.7~2.4% + 保証料 |
創業融資 | 2.32~3.20% | 1.9~2.5% + 保証料 |
一般融資 | 2.02~2.90% | 金融機関所定金利 + 保証料 |
※ 一般融資については、公庫–普通貸付(担保不要のケース)と、制度–事業一般で比較。
なお、中小企業基盤整備機構では、CRDのデータを活用した「経営自己診断システム」を無料で公開しています。簡単なデータを入力するだけで、経営状況を可視化できるため、経営改善に役立つだけでなく、保証料算定の目安とすることもできます。
制度融資の申込み
制度融資の申込み方法は、以下のとおりとなります。
利用する金融機関の決定と申込みの打診・相談
制度融資を利用する場合には、はじめに申し込みたいと思う金融機関を決定し、正式な申込みの前にまずは打診・相談をすることからはじめます。
その際には、次のような資料を用意します。
- 代表者の身分証明書
- 融資申込の概要がわかる資料
- 決算書2期分
- 会社の概要がわかる資料(パンフレット、ホームページをプリントアウトしたもの)
なお、融資申込みの概要としては、以下の内容をまとめておくことをおすすめします。
- 資金の使い道:運転資金か?設備資金か?
- 資金の内訳:3ヶ月分の運転式としてなど
- 希望する融資額
- 返済期間:元金据置を希望するときは、その期間
- 担保の有無:担保を利用しない場合は不要
金融機関による引き受けの決定
申込みの打診をした後、金融機関により融資の申込みを引き受けるかどうかの決定がされます。
問題ない場合にはそのまま正式な申込みの手続きが行われますが、ケースによっては、この時点で申込みを断られることもあります。
融資の申込み
融資の申込みが了解されたときには、金融機関から申込証や信用保証協会への書類、個人情報取得の同意書などが交付されるので、これに記載し、その他の必要書類を添えて申込みをします。
信用保証協会による審査
金融機関による審査が終了した後、必要資料が信用保証協会へ送られ、信用保証協会による審査が行われます。
信用保証協会は「保証承諾」「一部承諾」「否決」のいずれかの判断をし、その結果を金融機関へ通知します。
融資の実行
信用保証協会から「保証承諾」または「一部承諾」の通知があっ場合には、金融機関は申込人との間で融資の契約(金銭消費貸借契約)を締結し、その後に融資の実行手続き(入金手続き)を行います。
信用保証協会を利用するメリットとデメリット
信用保証協会は、中小企業や創業者の融資をサポートする機関ですが、その利用についてはメリットだけでなく、デメリットもあります。そのため、これらを十分に考慮して利用する必要があります。
信用保証協会を利用するメリット
①融資が利用しやすくなる
銀行等のプロパー融資は借入れのハードルが高いため、信用力の低い中小企業や創業企業はほぼ利用することができません。また、プロパー融資では、一定の実績を積むまであまり大きな額を借りられない、返済期間が短い、中小企業に対しては金利が高くなりやすいなどの特徴があります。
しかし、制度融資では、企業の規模や実績に係わらず、融資額や返済期間、金利などの条件がすべて一律となっており、その内容も長期融資、低金利と優遇されているため、中小企業や創業者が利用しやすいものとなっています。
②金融機関との信頼関係を構築するのに役立つ
信用保証協会付の融資では、自分が利用したいと思う金融機関の窓口を通じて融資を受けることができるため、その後の返済だけでなく、振り込みなどの各種取引をすることができます。そのため、金融機関との関係を強化するのに役立ちます。また、制度融資では、複数の銀行等を利用して融資を受けることができるため、取引先金融機関を拡大をすることも可能です。
これに対して、日本政策金融公庫などの政府系金融機関では、口座の作成をすることができないため、取引は借入れと返済だけとなり、入金や振り込みなどの手続きをすることができません。
③融資の利用枠を拡大することができる
通常、企業が利用できる融資には、日本政策金融公庫などの政府系金融機関の融資、一般の金融機関によるプロパー融資、信用保証協会付融資の3種類があります。しかし、それぞれの融資ごとに金融機関が設定した融資の枠(与信枠)があり、短期間でこれを増やすことはできません。そのため、公庫やプロパー融資だけを利用していると、早いタイミングでその与信枠を使い切ってしまうこととなります。
けれど、制度融資では、中小企業等でも普通保証2億円、無担保保証8,000万円の保証を利用することができるため、公庫やプロパー融資と併用することで利用できる融資の枠を広げることが可能となります。
④さまざまなタイプの保証を利用できる
信用保証協会では、創業保証、経営力強化保証制度、小口零細企業保証制度、流動資産担保融資保証制度(ABL保証)など、企業の資金ニーズにあわせてさまざまな種類の保証制度を取り扱っています。そのため、利用者のニーズにあわせた適切な保証制度を選択することができます。
⑤法人代表者以外の保証人の必要がない
信用保証協会の保証や融資を利用する場合には、個人事業主の場合は申込人以外の第三者保証は必要ありません。
また、法人が利用する場合には、原則として、法人の代表者以外の連帯保証人は不要となります。
信用保証協会のデメリット
①必ずしも保証が受けられると限らない
信用保証協会の保証は協会による審査により決定されるため、申込みをしても必ずしも保証が得られるわけではありません。とくに、利用している保証の残高が大きい、過去に返済に関する事故、遅れがあるといった場合には、原則として保証をうけるのが難しくなる他、風俗店やパチンコ店、金融業などの一定の業種については、はじめから保証の対象外となっています。また、めったにありませんが、信用保証協会の保証が受けられた場合でも、申込先金融機関の事情や判断によっては、融資がされないこともあります。
②保証の利用には、金利とは別に信用保証料がかかる
信用保証協会を利用する際には、金利とは別に一定の保証料が必要となります。また、保証協会の保証を利用する場合には、それが保証のみを受ける場合でも、制度融資を利用する場合でも、いずれについても一定の保証料が必要となります。
③地域によって制度の内容や対応が異なる
日本政策金融公庫では、全国どこの支店でも融資の内容や審査の対応は同じですが、信用保証協会は、基本的に都道府県または市区町村ごとに設立された団体のため、保証制度の内容や金額がそれぞれで異なります。そのため、A県では取り扱っている保証制度がB県では取り扱っていないということもあります。したがって、利用の際には自分の都道府県や市区町村ではどんな種類の保証や制度融資を利用できるのかを事前に確認しておくことをおすすめします。なお、信用保証協会では、保証の審査の基準や傾向も地域ごとで異なります。たとえば、東京などの大都市では比較的大きな金額の保証でも認められやすいですが、地方ではその額が小さくなる傾向があります。また、同じ事案でも、A県では保証の対象となるが、B県では対象とならないというケースもあります。このように信用保証協会では、制度内容や審査傾向について、かなりの地域差があるため、日本政策金融公庫のように全国どこでも同じ対応とはならないということに注意が必要です。
④返済が滞った場合には「代位弁済」される
信用保証付融資の返済が一定回数以上できなくなったときには、信用保証協会により代位弁済が行われます。代位弁済とは、債務者が返済できない場合に、信用保証協会が本人に代わって、金融機関に対して未払金の肩代わりをする制度です。しかし、これが行われた場合は、信用保証協会の保証が使えなくなる、金融機関からの融資が受けられなくなる、信用情報にキズがつくなどの不利益を被ることとなります。なお、代位弁済の詳細については、後述の「代位弁済とは?」をご参照ください。
⑤企業が所在する都道府県または市区町村の制度しか利用できない
制度融資の場合、利用できるのはその企業の事務所所在地もしくは、支店、営業所がある都道府県また市区町村の制度のみとなります。したがって、東京都にある企業は、埼玉県や千葉県の制度融資を利用することはできませんし、中央区の会社については、他の市区町村の制度融資は利用できないこととなります。このように、制度融資では、会社や支店の所在地がどこにあるかによって使える制度融資が決定されてしまいます。ただし、東京に本店があっても、他県に支店や営業所がある場合には、その支店等の所在する都道府県や市町村の制度融資を利用できます。
例
本店が東京都中央区にあり、支店が千葉県千葉市にある会社の場合
利用できる制度融資:東京都制度融資、中央区制度融資、千葉県制度融資、千葉市制度融資のうちのいずれか ※ただし、同時申し込みは不可
信用保証協会では、いくらまで保証を利用できる?
信用保証協会では一般保証2億円、無担保保証枠8,000万円の信用枠を提供していますが、誰もがその限度額まで保証を受けられるわけではありません。利用者の方の中には「自分の会社はまだ2,000万円の制度融資しか利用していないから、あと6,000万円の保証が受けられるはずだ。」とお考えの方がいますがこれは間違いです。
この保証枠というのは、あくまでも利用できる上限であっで、実際に利用できる額は企業の信用力や財務内容によって異なります。なお、自分の会社がいくらの保証を利用できるかを知るための目安として、「借入金月商倍率」というものがあります。この「借入金月商倍率」とは、企業の月商に対して何倍くらいの借入れをしているかを示すもので、例えば月商が500万円の会社が3,000万円の借入れをしている場合、倍率は6倍ということになります。この倍率が高くなるほど保証を受けにくくなるため、月商に対して借入額が大きな会社は注意が必要です。
一般的に、この倍率が3か月までは安全、3~6か月ならば注意、6か月以上では危険とされているため、月商や借入額を安全圏内でコントロールできている場合は上限額までの保証を利用できる可能性があります。しかし、これとは逆に、倍率が危険水域に達している場合には、それ以上の保証は厳しくなります。
信用保証協会の保証が利用できないケース
以下のいずれかに該当する場合には、信用保証協会の保証を利用することができません。
一定の業種に該当する場合
以下のいずれかの業種に該当する場合には、政策的な理由により信用保証協会の保証を利用することができません。このような業種を「信用保証対象外業種」といいます。
①農林水産、狩猟業(一部のものを除く)
②金融業、保険業(保険媒介代理業及び保険サービス業を除く)
③風俗営業に関連する業種
④学校
⑤取り立て業
⑥宗教、 政治・経済・文化団体その他の非営利事業及び団体(NPO法人を除く)、LLP(有限責任事業組)
NPOについては、以前は保証対象外となっていましたが、現在では保証をうけることができるようになりました。ただし、LLPについては、パススルー課税により内部に利益を留保できない仕組みのため、現在も保証の対象とはなっていません。
一定の条件に該当する場合
以下のいずれかに該当する企業については、信用面から信用保証協会の保証を利用することができません。
① 信用保証協会の代位弁済先で、協会に求償債務が残っている方。
② 原則として、協会に対して求償権の保証人として保証債務を負っている方。
③ 手形交換所または電子債権記録機関で銀行取引停止処分を受けている方。
(1回目の不渡または支払不能を出して6ヵ月を経過していない場合を含む)
④ 破産、民事再生、会社更生等法的手続中の方(申立中の方を含む)または内整理等私的
整理手続中の方。
⑤ 最後の登記後12年以上経過した株式会社で、新会社法第472条の規定により休眠会社
として解散したものとみなされた方。
⑥ 協会の保証付融資または金融機関固有の融資について延滞等の債務不履行がある方。
⑦ 確定申告をしていない方。
⑧ 事業実態・内容、資金使途、返済能力等を判断する資料の提示がない方。
⑨ 粉飾決算や融通手形操作を行っている、税金を滞納し完納の見通しが見込めない、事業実態・資金使途・返済能力などを判断するための資料がない方
これらの中でも、とくに⑦の確定申告をしていない場合などは、うっかりしてしまいがちですが、これに該当してしまうと、次の期の決算書ができるまで保証を受けられなくなってしまいますので注意してください。
信用保証協会による「代位弁済」とは?
「代位弁済」とは、信用保証協会の保証付きで融資を受けて、その返済ができなくなったときに、同協会が金融機関に代わって弁済をする制度のことです。
信用保証協会が債務者本人代わって、金融機関へ弁済することから「代位弁済」と呼ばれます。
代位弁済がされた場合には、それまでの金融機関への支払い義務は信用保証協会へ移転するため、以降は信用保証協会に対して弁済していくこととなります。
代位弁済により、支払い義務がなくなるわけではないことに注意してください、
通常、代位弁済は、保証協会付融資について「3回以上の支払いの延滞」または「90日以上の支払いの延滞」が生じた場合に行われます。
代位弁済がされた場合には、次のようなペナルティーが発生します。
①高額な延滞金が発生する
代位弁済が行われると、利息の支払いはなくなりますが、それに代わって14%/年の高額な損害金が発生します。
②信用情報に事故情報が記録される
代位弁済がされると、信用保証協会経由で個人信用情報登録機関に代位弁済をした旨、いわゆる「事故情報」が登録されます。そのため、代表者の方はその期間中及び正常な弁済の開始後しばらくの間は、各種クレジットの利用などをするのが難しくなります。
③融資が受けられなくなる
代位弁済がされた場合には、新規や追加の保証をうけられなくなります。ただし、一定の条件を満たす方については、「求償権の消滅制度」により、新規の保証をうけられることがあります。
④強制執行などの手続きがされる可能性がある
代位弁済後に、協会と約定した支払いができない場合には、土地や建物に対する強制執行や、保証人を立てている場合には、保証人に対する請求が行われることになります。なお、土地や建物を担保に入れていない場合でも、信用保証協会は一般債権者の権利にもとづいて土地や建物に対する強制執行をすることができます。
以上のように、信用保証付融資について代位弁済が行われた場合には、さまざまな不利益を被ることとなります。
とくに、信用情報機関への事故情報の登録や、土地・建物への強制執行などがされると事業を継続できなくなる可能性があるため、保証協会付融資の返済は極力遅らせないようにしましょう。
もし、支払いが難しくなった場合には早めにリスケジュールなどを利用して、金融機関の協力の下、返済額を減らすことをおすすめします。
信用保証協会を活用するためのポイント
信用保証協会からの信用を得て、十分な保証を受けるためには、次のような対策が有効となります。
制度融資は、金融機関の負担の少ないものから使う
制度融資にはさまざまな種類がありますが、その中でもはじめに利用したいのが「創業融資」と「特別小口」です。
この2つは他の制度融資と異なり、「責任共有制度」の対象となっていません。「責任共有制度」とは、中小企業への融資について、信用保証協会と金融機関がそれぞれリスクを共有する制度のことをいいます。通常の信用保証付融資では、融資先の企業が返済不能となったときには、信用保証協会が80%、融資をした金融機関が20%の責任を負うため、これを理由として金融機関が融資に積極的にならないというケースがあります。しかし、この2つの制度融資は責任共有制度の対象となっていないため、企業が返済不能や破綻した場合でも金融機関が100%の保証をうけることができます。金融機関にとっては、リスクが少ないこれらの融資制度を利用してもらった方が融資をしやすくなるため、他の制度融資よりも積極的に対応してもらえる可能性が高くなります。
積極的に決算書などを提出する
金融機関や信用保証協会の信頼を得るには、企業が自ら進んで財務内容などの情報を開示することが重要です。通常の中小企業では、記帳の仕方や資料の作り方に問題がある、売上げが下がったのを知られたくないなどの理由から、あまり決算書などの提出に積極的でないところが少なくありません。このような対応が金融機関による支援を妨げるとともに、融資審査の際においてもマイナスの要因となります。しかし、情報を積極的に開示、報告する企業はそれだけでも金融機関の信用が得やすくなるだけでなく、金融庁もこのような企業に対しては積極的に支援すべしとしています。したがって、業績が悪いときも情報を開示し、金融機関や信用保証協会と継続的な信頼関係を作っていくことがスムーズな保証や融資のためには不可欠となります。
できるだけ事業計画書を提出する
信用保証付融資の申込みでは、創業融資のケースを除き、事業計画書の提出をしなくとも、申込書だけで済んでしまうことがほとんどです。しかし、もし少しでも融資の確率を上げたいのなら、できるだけ事業計画書を作成して提出することを強くおすすめします。
なぜなら、通常の借入申込書には希望額や返済期間、資金使途といった簡単な項目しか記載する箇所がないため、「なぜ、その融資が必要となったのか?」、「どうやって返済するのか?」などの細かい情報が伝わらないからです。また、事業計画書の提出は、業績が悪化している企業が融資を受ける際にも役立ちます。
金融機関では、業績が悪化している企業から融資の申込みがあった場合、以下のことを確認します。
- なぜ、業績が悪化したのか?
- 融資により、どの程度、業績が回復する見込みがあるのか?
- 融資後の返済はどうやって行うのか?
しかし、借入申込書だけではこれらについてわからないため、通常は決算書や試算表、ヒアリングの結果などからこれらを判断しますが、事業計画書にはこれらの情報をまとめておけばわかりやすいだけでなく、具体的な今後の方針や解決案などを盛り込めるため、審査においても評価がされやすくなります。
まとめ
信用保証協会は、中小企業や創業者といった信用力の低い企業の融資について公的な保証をする機関です。信用保証協会の保証や制度融資を利用することで、これらの方であっても容易に有利な条件で保証や融資が受けることができるようになります。
なお、制度融資では、信用保証協会の承諾の有無により融資が出るかどうかが決まるため、信用保証協会への対策は非常に重要なものとなります。そのため、制度融資の申込みでは、金融機関への対応だけでなく、信用保証協会にも配慮し、できるだけ協会の信用を得るようにするということが融資成功のカギとなります。