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「親から相続した土地がある」
「住所を移転したが手続きをしていない」
現在、このような土地や建物をお持ちの方も少なくないと思います。
しかし、今後は相続や住所変更登記手続きが義務となるだけでなく、手続きをしないと過料の対象になるということをご存知でしょうか?民法の一部が改正されたことにより、令和6年4月から相続登記・住所等の変更登記の義務化や遺産分割に関する新たなルールの導入などが予定されています。
この記事では、これらの新たなルールの内容について詳しく解説いたします。
所有者不明土地とは?
所有者不明土地の増加を防止するため、不動産登記制度の見直しや土地を手放すための制度、土地利用に関連する民法のルールなどが整備されることとなっています。
所有者不明土地の定義
「所有者不明土地」とは、相続登記がされないこと等により、以下のいずれかの状態となっている土地をいいます。
- 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
- 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地
平成29年国土交通省調査によれば、全国における所有者不明土地の割合は22%となっており、これは九州本土の大きさに匹敵するものとなっています。
また、所有者不明土地のうち66%が相続登記未了、34%が住所変更未了という状況です。
全国で所有者不明土地が増加することにより、以下のような問題が生じることから、これまでもその対策が求められてきましたが、あまり具体的な効果はありませんでした。
<所有者不明土地の増加により生じる問題>
- 相続手続きなどの際に、土地の所有者の探索に多大な時間と費用を要する
- 問題が生じた場合の責任が不明確である
- 公共事業や復旧・復興事業の支障となる
- 管理する人間がいないため、周辺環境への悪影響が生じたり、犯罪の温床となる
所有者不明土地に関する法令整備の状況
平成 30 年 | 〇 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成 30 年法律第 49 号)制定、令和元年 6 月 1 日に全面施行 |
令和元年 | 〇 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第 15 号)が成立 |
令和3年 | 〇 「民法等の一部を改正する法律」と「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立 |
令和5年4月 | 所有者不明土地・建物の管理制度の実施 相続土地国庫帰属制度の実施 共有制度の見直し 遺産分割に関する新ルールの導入 相隣関係の見直し |
令和6年4月 | 相続登記の申請の義務化 相続人申告登記の実施 |
令和8年4月まで | 所有不動産記録証明制度の実施 住所等の変更登記の申請の義務化 |
改正法のポイント
相続に関する土地関連の法整備が急務となる中、令和3年4月21日「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(令和3年4月28日公布)。
これらの法律では、主に以下の3点について定められています。
① 登記を促進するための「不動産登記制度の見直し」
- 相続登記、住所等の変更登記の申請義務化
- 相続登記、住所等の変更登記の手続の簡素化・合理化
② 土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設
- 相続等により取得した土地を国庫に帰属させることができる制度の創設
③ 土地利用に関連する民法のルールの見直し
- 土地・建物に特化した財産管理制度の創設
- 共有地の利用の円滑化などの共有制度の見直し
- 遺産分割に関する新たなルールの導入
- 相隣関係の見直し など
不動産登記制度の見直しについて
ここでは、改正法のうち主な不動産登記制度の見直しについてご紹介します。
相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行予定)
これまでは、「相続登記の申請は任意とされていた」「申請をしなくても相続人が不利益を被ることが少なかった」「相続した土地の価値が乏しいような場合には、費用や手間をかけてまで登記の申請をする意味がなかった」などの理由により、相続が発生しても積極的に相続登記がされてきませんでした。
しかし、相続登記がされないことにより、時間が経つほど相続人が増え、いざというときに手続きができないという弊害が生じたことから、今回の法改正により相続登記の申請が義務化されました。
今後、相続登記については、以下のルールにより処理されることとなります。
< 相続登記全般に関するルール >
①基本的なルール
相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
②遺産分割成立時のルール
遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければなりません。
③義務に違反した場合
上記①・②ともに、正当な理由がなく義務に違反した場合は、10 万円以下の過料が適用される可能性があります。
なお、上記の正当な理由としては、次のようなものが考えられています。
- 数次相続※が発生するなどにより相続人が極めて多数になり、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲などが争われている場合
- 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情がある場合など
※数字相続:相続手続きをする前に、その相続人につき新たな相続が発生すること
また、注意しなければならないのが、この相続登記の申請義務は、改正法の施行後に発生した相続のみならず、施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していたケースについても適用されるということです。
この場合、
- 改正法の施行日(令和6年4月1日)
- それぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から 3 年以内
に相続登記の申請をする必要があります。
相続人申告登記の創設(令和6年4月1日施行予定)
不動産を所有している方について相続が発生した場合、その相続人の間で遺産分割協議が成立するまでの間は、すべての相続人が法定相続分の割合で不動産を共有することとなります。
しかし、そのためには法定相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本などを収集しなければならず、時間や労力の負担が大きいものとなっていました。
そこで、今回の法改正では、より簡易に相続登記の申請義務を履行することができるよう、新たに「相続人申告登記」の仕組みが設けられました。
相続人申告登記は、それぞれの相続人が単独で申告することができ、添付書面も限定されるため、相続登記の申請義務を少ない手間で行うことが可能になります。
<相続人申告登記とは?>
相続人申告登記とは、以下の2点を登記官に申し出ることで、相続登記の申請義務(上記の基本的なルールの義務)を履行したものとみなす制度です。
- 登記簿上の所有者について相続が開始したこと
- 自らがその相続人であること
この申出がされると、申出をした相続人の氏名・住所等が登記されますが、持分の割合までは登記されないため、すべての相続人を把握するための資料の添付が必要なく、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本等のみを提出すればOKとなります。
また、一人の相続人が相続人全員分をまとめて申し出ることもできます。
ただし、この制度による表示では相続によって権利を取得したことまでは公示されず、従来の相続登記とはまったく異なるもののため、その後に所有権の移転などを行う場合には、通常の相続登記(相続を登記原因とする所有権移転登記)を行う必要があります。
<遺産分割したときや分割協議がまとまらないときは?>
相続人申告登記の申出後に、遺産分割協議によって不動産の所有権を取得したときは、遺産分割成立の日から 3 年以内に、その内容を踏まえた相続登記の申請を行う義務が生じます。
ただし、相続人申告登記の申出後、遺産分割が成立しない場合は、それ以上の登記申請は義務付けられません。
所有不動産記録証明制度(令和8年4月までに施行)
これまでは複数の不動産を所有している方が亡くなった場合、相続人がそのすべての不動産を把握しきれず、相続登記から漏れてしまう不動産が生じるということがありました。
今回の法改正ではこれを防止し、また、手続きの負担を軽減するため、新たに「所有不動産記録証明制度」が創設されました。
「所有不動産記録証明制度」とは、特定の者が登記簿上の所有者として記録されている不動産(そのような不動産がない場合には、その旨)を一覧的にリスト化し、証明書として発行する制度です。ただし、プライバシー等に配慮して、この証明書の交付を請求できるのは、本人または相続人その他の一般承継人に限定されます。
今後はこの制度により、被相続人の所有していた不動産の一覧が証明書として発行されるため、相続登記が必要なすべての不動産を把握しやすくなります。
所有権の登記名義人の死亡情報についての符号の表示について(令和8年4月までに施行)
これまでは、不動産の所有権の登記名義人が死亡しても、相続登記等がされない限り、不動産の登記記録情報から所有者の死亡を確認することはできませんでした。
このような状況を解消するため、今回の法改正では、登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から死亡情報を取得した場合、その死亡の事実を職権で不動産登記に符号で表示できることとなりました。
住所等の変更登記の申請の義務化について(令和8年4月までに施行)
「これまでは、住所等の変更登記の申請は任意とされていたこと」、「転居等の度にその所有不動産について住所等の変更登記をするのは負担であること」などから、登記簿上の所有者の氏名や住所が変更されてもその登記が行われてきませんでした。
そこで、相続登記の申請の義務化と同様に、所有者不明土地の発生を予防するため、住所等の変更登記の申請が義務化されました。
今後、住所移転があった場合の変更登記については、以下のルールにより処理されることとなります。
住所等の変更登記の申請義務についてのルール
① 基本的なルール
登記簿上の所有者については、その住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければなりません。
② 義務に違反した場合
正当な理由がないのに義務に違反した場合、5 万円以下の過料の適用対象となります。
なお、住所等の変更登記の申請義務は、相続登記の場合と同様に、改正法の施行後に発生した住所等の変更のみならず、施行日前から住所等の変更登記がされていない不動産についても適用されます。
この場合も、
- 改正法の施行日(具体的には政令で決定)
- それぞれの要件を充足した日
のいずれか遅い日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければなりません。
相続土地国庫帰属制度の創設
所有者不明土地の発生予防の観点から、新たに「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)」(令和3年法律第 25 号)が公布され、土地の所有権を取得した相続人が、今後その土地を利用する予定がない場合、法務大臣の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となりました。
申請できる人
本制度の申請をすることができるのは、原則、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した方となります。また、制度の開始前に土地を相続した方でも申請することができます。
しかし、売買等によって任意に土地を単独で取得した方や法人は対象になりません。なお、土地が共有の場合には、共有者全員で申請することが必要となります。
申請の対象となる土地
次のような通常の管理又は処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地については、本制度の対象外となります(詳細については、今後、決定の予定)
<国庫帰属が認められない土地の主な例>
- 建物、工作物、車両等がある土地
- 土壌汚染や埋設物がある土地
- 危険な崖がある土地
- 境界が明らかでない土地
- 担保権などの権利が設定されている土地
- 通路など他人による使用が予定される土地
要件審査・承認
申請後、法務局による書面審査や実地調査が行われます。
なお、今後、国や地方公共団体に対して、承認申請があった旨を情報提供し、土地の寄附受けや地域での有効活用の機会を確保することが予定されています。
負担金の納付について
本制度の申請をするには、申請時に審査手数料を納付するほか、国庫への帰属について承認を受けた場合には、負担金(10 年分の土地管理費相当額)を納付する必要があります。
具体的な金額や算定方法は、今後、政令で定められる予定です。
<相続土地国庫帰属制度の手続のイメージ>
① 承認の申請
- 相続や遺贈により土地を取得した相続人全員による申請
- 申請書および添付書類の提出
- 審査手数料の納付
② 法務局による要件審査、承認手続き
- 書面審査や実地調査などの要件審査の実施
- 要件を満たす場合は法務大臣が承認
- 承認の場合は負担金を通知
③ 申請者が負担金の納付(通知を受け取ってから30日以内)
④ 国庫へ帰属
土地・建物に特化した財産管理制度の創設について
調査をしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物については、利害関係人が地方裁判所に申し立てることによって、その土地・建物の管理を行う管理人を選任してもらうことができるようになります。
①管理人による管理の対象となる財産
以下のような不動産等が管理の対象となります。
- 所有者不明土地(建物)
- 土地(建物)にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)
- 建物の場合はその敷地利用権(借地権等)
ただし、上記以外のその他の財産は対象となりません。また、区分所有建物については、所有者不明建物管理制度は適用されません。
②申立権者
所有者不明土地・建物の管理について利害関係を有する利害関係人が不動産所在地の地方裁判所に申立てをします。
また、地方公共団体の長等には、所有者不明土地法において、所有者不明土地管理命令の申立権を付与する特例が設けられています。
③管理命令の発令
調査を尽くしても所有者又はその所在を知ることができず、管理状況等に照らし管理人による管理の必要性がある場合には、利害関係人等の請求により、裁判所は管理命令を発令し、管理人としてふさわしい者(弁護士・司法書士等)を管理人に選任します。
④管理人の権限・義務等
管理人は、保存・利用・改良行為、裁判所の許可を得て行う売却などの処分行為、訴訟の代行などを行う権限・義務等を有します。
また、同様に、「管理不全状態にある土地・建物の管理制度」も設けられました。
民法のその他の改正について
上記の他に、以下のような民法等の改正が予定されています。
共有制度の見直し(令和5年4月1日施行)
相続登記の未了により所有者不明となった土地の多くは、相続人による共有状態になっているため、これらに変更を加える場合には共有者全員の同意が必要となり、利用を妨げる原因となっていました。
そのため、今回の法改正では、共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わない変更行為(軽微変更)については、共有者の持分の過半数で決定することができるようになりました。
また、所在等が不明な共有者がいる場合には、他の共有者は、地方裁判所に申し立て、その決定を得て一定の変更行為をすることができるようになります。
長期間経過後の遺産分割の新たなルールの導入(令和5年4月1日施行)
遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続財産が共有状態となり、その一部が所在不明になるなどして、所有者不明土地が発生する原因となります。
しかし、これまでは遺産分割をすることについての時的制限がなかったため、遺産の管理・処分が困難になることも少なくありませんでした。
今回の改正法では、これを解消するため、被相続人の死亡から 10 年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)によることとするルールが新たに設けられました。
なお、新たなルールは改正法の施行日前に開始した相続についても適用され、この場合には施行時から5年間の猶予期間が設けられますが、5年の猶予期間後には具体的相続分により分割できる利益が失われるため注意が必要です。
したがって、今後は、相続人が具体的相続分による遺産分割を求めるためには、「10 年が経過する前」もしくは「5年の猶予期間」前に遺産分割の請求をしなければならないこととなります。
相隣関係の見直し(令和5年4月1日施行)
今回の民法改正により、境界調査や越境してきている竹木の枝の切取り等のために隣地を一時的に使用できることが明らかにされました。また、隣地の所有者がその所在を調査しても分からない場合にも、隣地を使用することができるようになります。
さらに、催促しても越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその所在を調査しても分からない場合等には、越境された土地の所有者が自らその枝を切り取ることができる仕組みが整備されました。
ただし、隣地使用者から使用を拒否されている場合などには無断で隣地を使用することができないため、このような場合には判決による許可を得る必要があります。
なお、隣地を使用する日時や場所、方法は、隣地所有者などにとって損害が最も少ないものを選ばなければならないとされています。
まとめ
今回の法改正では、相続登記・住所移転登記の義務化の他、相続土地国庫帰属制度の創設といった相続に関する大きな手続きの変更や新設が予定されています。
また、それ以外にも、土地・建物に特化した財産管理制度の創設や、共有地の共有制度の見直し、遺産分割に関する新たなルールの導入など相続に関連する制度の整備や変更が行われる予定となっています。
したがって、今後相続手続きやそれに関する土地や建物の管理・処分をする際には、これらの法律の施行状況を踏まえ、間違いのない判断をすることが求められます。
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