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新型コロナのまん延や度重なる災害や戦争、サイバーテロなど、現代の企業社会に影響を及ぼす現象は、予測不能な場合が多いようです。このような状況のことを俗に「VUCA(ブーカ)」と呼んだりします。
ビジネスパーソンとしては、一見、不安に感じますが、実はそんな予測不能な時代だからこそ、取れる戦略やチャンスもあります。
VUCA時代を生き抜くための経営戦略や、ビジネス手法をご紹介します。
VUCAとは
VUCAとは、以下の5つの言葉の略語で、世の中やビジネスにとって、予測が難しくなっている状況のことを指します。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
VUCAは、もともと軍事用語でした。1980年代に言葉として生まれ、米ソ冷戦の終結に伴い、核兵器中心の戦略から、より多様で不確実な戦略への転換を意味する言葉として使われるようになりました。
近年はビジネス用語として、激しい変化により将来予測が困難になったという意味で使われるようになりました。
企業を取り巻くVUCAの現状
企業環境をめぐるVUCA現象には、まず、ライバルの多様性が挙げられます。
従来、ビジネスの教祖というのは同じ業界や業種の間で行われていました。そのため、企業活動においては業界内のライバルの動向を常に調査することが重要とされてきました。しかし、近年、IT技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方のもと、従来では考えられなかった競争状況が生まれています。
業種業界を超えた異次元競争
例えば、タクシー業界を見てみましょう。従来は国から認可を得た事業者が決められた運行方法や料金体系に基づいて競争していましたが、ウーバー・テクノロジーズが提供する「素人が自分の車の空いた時間を使って移動サービスを提供する」という画期的なサービスを始めたために、業界は大きな脅威にさらされています。
次に、「民間人の空き部屋情報を交換する」サービスを提供するAirbnbは、低価格で旅をしたいというニーズを捉えて民泊を後押ししたため、既存のホテル・旅館業かいを圧迫しています。ITを駆使すると、見ず知らずの業界から強力なライバルが現れるということが頻発しています。
身近にある激戦「シェアオブストマック」
実は、VUCA現象は身の回りにも常に起こっています。例えば「昼食ビジネス」です。昼食を提供する店といえば、従来は定食屋さんやラーメン屋といったお店が定番でしたが、今や弁当店、スーパーやコンビニ、宅配、キッチンカーなど、多種多様な食ビジネスが存在しています。
それらは俗に「シェアオブストマック(胃袋の奪い合い)」と言われ、年々新たな手法が生まれているビジネス分野です。
ビジネスがVUCA化する背景
では、なぜビジネスがVUCAの状態に突入したのでしょう。実は、さまざまな要因が複雑に絡まってVUCAの要因を作っています。
グローバル化
近年、ビジネスの範囲が地球規模で拡大しています。単なる貿易だけではなく、工場や拠点の海外進出も積極的に行うようになっています。そうなると、ライバルの数が幾何学的に増大するとともに、インターネットを活用して製品やサービスを求める顧客も世界規模でベストチョイスができるようになるため、一気にシェアを奪われることも珍しくなくなっています。
インターネットの普及
グローバル化を一気に加速させたのが、インターネットの普及です。近年のネットの世界は「Web2.0」と言われ小規模企業や知名度のない企業でも自社製品の発信が世界レベルで可能になるため、越境ECなどが容易になり、大企業であっても常に安定した売り上げが保証できない時代になっています。
法律の改正や規制緩和
さらに、人口減少や高齢化に伴って市場が成熟化し、企業業績が低迷していくと、なんとかしたい政府や地方自治体は、経済の活性化を目指して、さまざまな規制を緩和していきます。
ここに新たなビジネスの芽が生まれていきます。そこにトライするのは、業界の慣習に縛られない新興企業が多く、既存企業の業績を脅かし始めます。
VUCA時代のパラダイムシフト
VUCA時代に突入した現代、従来のビジネスの発想では、企業は到底生き残ってはいけません。
そのために重要な考え方は「ユーザーニーズに対する考え方」と「経営スピード」を考え直すことです。
ユーザーニーズを深く捉えること
これは、本来どこの企業も行うべきことですが、製品やサービスを購入する消費者やユーザーの核になるニーズを捉え直すことが重要です。
長年、特定の業界のビジネスを続けていると、「顧客のニーズはこんなことだ」という固定観念が作られてしまいます。
自社の業種、業界にこだわらないこと
消費者やユーザーのニーズを真摯に見つめ直してみると、自社だけでそのニーズに対応できないことを発見することも多いでしょう。例えば、もっと手軽にスムーズな移動手段を求めている消費者のために、タクシービジネスの改善を行うのには限界があります。自社だけでなく法律や行政の縛りがあるためです。
そのためには次元を超えた異業種交流や新たに別法人を設けたり、業界のしがらみがないベンチャー企業に解決策を求めたりするのもいいでしょう。
VUCA時代の経営戦略
では一体、この混沌としたVUCA時代には、具体的にどんな経営戦略が必要なのでしょうか。
リアルタイムのニーズ調査
企業を取り巻く環境は、近年加速度的に変化しています。人間の成長の数倍から数十倍のスピードで成長する犬やネズミになぞられて「ドッグイヤー」とも「マウスイヤー」とも言われています。つい最近まで、最新とされていた技術があっという間に陳腐化していき、昨日の勝者が今日の敗者という状態です。
常に最新情報をキャッチしておくことは、もはや現代企業の必須条件とも言えます。
投下資本の短期回収
製品やサービスを市場に投入してから退出するまでの「製品のライフサイクル」が非常に短命化しています。分かりやすい例で言うと、典型的な製品がスマートフォンです。あっという間に製品が陳腐化してしまいます。投下資本をいかに短期間で回収するかが大きなテーマになっています。
ビジネスの開発手法の変革
近年、ビジネスのしくみを作り上げる手法も、変革を余儀なくされています。それは、近年のソフトウェアの開発手法の変化に似ています。会社の基幹業務システムなどは、「ウォーターフォール開発」といわれ、大規模なシステムに対して綿密な仕様書を作成し、前工程を完了させてから次の工程に取り掛かる、まるで川の流れのような開発手法です。長年、システム開発といえばこの手法でした。
しかし近年、アプリ開発など、構想からリリースまで時間がかけられないようなシステムなどは、ざっくりとした仕様書から開発を進め、ユーザーニーズによって変更していくという「アジャイル開発」が主流になりつつあります。
ビジネスのしくみもアジャイルモデルが求められています。
他社が狙わない市場に商機あり
業界の常識にとらわれ過ぎると、VUCAの罠にはまってしまいます。他社が見向きもしない市場にも勝機は潜んでいます。
例えば、「未開拓市場に既存技術を持ち込む」という手法が考えられます。アフリカのケニアでは、近年、地方から出稼ぎに来る若者が増えてきましたが、稼いだお金を送金する手段に困っていました。銀行口座を開設することはハードルが高かったためです。そこで、日本ではすでに導入が進んでいる電子マネーで送金する仕組みを導入したところ、瞬く間に広まっていったということです。
また、「縮小していく市場に敢えて取り組む」という戦略もありです。カメラや写真市場は急速にデジタル化が進み、フィルムカメラやその現像市場は急速に縮小していきましたが、カメラのキタムラでは、敢えてその縮小する市場に目を向けて、現像する販売店チェーンを次々に買収し、その分野で独り勝ちをしました。
伝統的業界に切り込むチャンスあり
前述のタクシー業界や宿泊業界は、法律の規制が強いこともあり、新たなビジネスモデルを使って異業種から参入する余地が充分にあります。
現に金融業界の雄である銀行も、ITと金融技術を融合したフィンテック企業に浸食されつつあります。銀行は預金、融資、送金などの業務を独占してきましたが、今や融資そのもの以外の多くをフィンテック企業が担っています。2021年1月14日には、全国銀行協会が、銀行間の送金インフラをフィンテック企業に開放すると正式に発表しました。
そういった視点に立つと、様々なチャンスがVUCA時代にはあるといえます。
まとめ
VUCAとは何か?VUCA時代を生き抜くためのポイントや戦略について述べてきましたが、いかがだったでしょうか?
製品のライフサイクルが激しく短サイクル化すると同時に、異業種から思わぬライバルが出現して既存業界を脅かすような状況が常態化しているのがVUCAですが、戦略や手法によってはチャンスにも繋がる時代だとも言えます。
自社の環境を今一度分析し直し、新たな視点でチャンスを見つけ出したいものです。
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